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偏差値81、10000円。

文・内藤みか

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 息子が先月、高校受験系の模試で3位という快挙をなしとげた。もちろん全体順位ではない。数学に限ってのことである。ちなみに偏差値はなんと81!

「すごいじゃない!」
 とほめる私に、息子は憂かない顔で、
「まだ上に2人いる」
 と答えた。3問間違えたことをひどく悔やんでいた。そして、
「次こそは1位になってやる。問題を間違えなければいいんだから」
 と誓っている。私はうんそうだねとは言ったが、まさか彼が本気で1位を目指しているなんて思いもしなかった。

 そして今月。息子は模試で100点をとって帰ってきた。もちろん数学だけの話である。ランキングは約9000人のなかで、1位。100点なのだから当然である。ちなみに偏差値は前回と同じ81。

「すっ、すごいじゃない!」
 本気でほめた。予告100点を取れるなんて並大抵のことではない。ましてや過去1度も模試で100点を取ったこともない息子なのだ。1位宣言することで彼の意識にスイッチが入り、有言実行へと向かったのだろうか。私はかつて読んだ自己啓発系の書籍たちを頭に思い浮かべた。何冊もに「夢を宣言すると実現に向けて動き出す」というようなことが記されていた。今回の息子はまさにそれで、私は彼のパワーに圧倒された。

 そして1位だったからなのか、塾の先生に呼び出された。
「お子さんは今の志望校では少しもったいないように思います。もう少し上を目指したらいかがですか?」
 
 これには困ってしまった。3年前の中学受験の時も、同じようなことを塾に言われ、調子に乗って高め狙いをしたらほぼ全滅を喫したのである。もう高望みはこりごり、入れそうな学校にすんなり入る、それ以上のことは私は息子に望んでいない。無理をさせて、またつらい結果を招いてしまったらどうしようもないではないか。
 それなのに息子は先生にほめられて調子に乗り、塾の特訓講座に申し込んでしまった。その額、10000円。果たしてモノになるのか心配だけれど、自分から「やる」と言い出した講座ということもあり、今のところグチもこぼさずせっせと通い詰めている。
 そして結局息子は志望校を上方修正してしまった。校名を聞いた私は青ざめた。本人の意思で本人の口から飛び出した宣言なのだし、夢がかなうようすべてがうまく動き出してくれることを、陰で願わずにはいられない。
 


(更新 2010/5/ 6 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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