知り合いの新川てるえさんが『子連れ恋愛がハッピーエンドになる本』の出版記念パーティーを開いた。シングルマザーのためのNPOを主宰している彼女は、そのパーティーに20人のシングルマザーとシングルファーザーを無料招待してくれて、私にもそのご案内が届いた。

 正直に言えば、私はシングルファーザーとの出会いがあるといいななんていう甘い期待も抱いて出かけていった。世の中にはシングルファーザーが増えており、約20万世帯いるという(2005年国勢調査)。これは母子家庭の約6分の1の数なので、私の想像よりもかなり多い。お友達になれたらお互いに助け合える仲になれるのではないだろうか。

 しかし会場に入って私は自分の顔が引きつっているのを感じた。他のパーティーでは感じたことがない緊張感がそこにあった。初対面の男性が、私ににこやかに飲み物を薦めてくださるのに、私は彼の顔すら見ることができなかった。ホストクラブだったら大いばりでグラスを受け取れるのに、なぜなのだろう。

 そんな状態だから、私にしては珍しく、人の輪に入っていくことができなかった。シングルファーザーと親しくなりたいと願っていたはずなのに、どうしてこんなに硬直してしまったのだろう? お互いバツイチで子どももいるのだろうし、楽しく自己紹介をしていけばいいのに。そう、いつものパーティーのように元気よく......。

 結局私は勇気を出すことができず、著者のお嬢さんとずっとおしゃべりをしてその場を切り抜けた。お嬢さんは22歳。私がいつも喋っているのもそのくらいの年齢の男の子がほとんどだから、彼女とは普通にお話をすることができたのだった。

 家に帰ってきても、まだ考えている。どうしていつもの自分らしくあの場でふるまえなかったのかと。それは私は普段、仕事の自分を前面に出しているからだと。ツイッターとか電子小説とかそういう話をしている時は一種の営業でもあり強い自分でいられる。でも離婚というものは自分にとっては弱い部分だ。ましてやひとりで悪戦苦闘しながら子育てをしていることも。

 情けない自分の姿を素直に晒すことに、私は慣れていない。若い男の子には離婚のことは笑い話として出すことはできる。でも同じ痛みを味わった人と、改めって離婚の話をするほどの度胸はない。別れて7年経ってもなお、私はまだ離婚を引きずっているのだと感じた夜だった。