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絵画教室体験、0円。

文・内藤みか

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 やっと娘の絵画教室が決まった。4軒目だった。こんなに苦労するとは思ってもいなかった。

 この辺りには絵画教室はおそらく10軒近くある。そのなかから子ども向けのクラスがあるところ......となると、数は4軒に減ってしまう。だから4軒目で決まらなかったらどうしようと思っていたので、娘が「ここに行く」と言ってくれて本当にほっとした。

 今回いくつも見学して知ったのは、絵画教室のメニューはわりと同じということ。週代わりで水彩、デッサン、工作、希望者には小学生でも油絵、という感じだ。

 しかし内容は似ていても、体験見学についての考え方はそれぞれのお教室で違った。
 見学料として月謝の半額ほどを請求するお教室もあれば、無料でいいですよと言ってくれるところもあった。でも一番あれっと思ったのは、娘にお絵描きをさせてくれなかったお教室だった。

 絵というのは偏差値があるわけではないので、先生との相性というものが大きい。娘の絵を見て先生があれこれ指導するものなのだから、実際に描いてみてお互いの嗜好が合うかどうか判断したかったので、少し残念だった。

 他のお子さんが楽しそうにスケートの絵を描いているのを、娘はおとなしく黙って見つめた。そして教室を出ると「私、あそこには行かない」と言った。どうしてと聞くと、「私はとても描きたかったのに描かせてくれなかったから」と言った。彼女もまた、見学だけというやりかたに疑問を感じていたのかもしれない。

 そのほかのお教室も、「幼稚園児が多すぎて静かに描けそうもないから」とか、「先生はとても好きだけど水曜日はお友達と遊ぶ約束をすることが多いから」などと娘なりの理由で次々とNGになっていく。
 本当はこの子、絵を習いたくないのかしら、と思うほどに彼女はかたくなだった。

 そして娘は最後のお教室では即決した。親としてもほっとしたけれど、「なぜこのお教室に決めたの?」と尋ねると、「だって、クラスの人数も少なくて落ち着けそうだし、先生ともお話が合うし......」などとひととおりもっともらしい理由をつけた後で、
「あとね、アメをくれたから」
 と笑った。

 作品制作中に、先生がひとりに1個ずつキャンディーを配ってくれたのだという。食いしん坊の娘は、このお教室に通えば毎回おいしいものをもらえると思ってそこを選んだのかもしれない。


(更新 2010/3/11 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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