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中学中退、マイナス数万円。

文・内藤みか

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 昨年末、息子が私立中学を中退した。半年間続いた担任との冷戦は結局こちらが去るという形で終わりを迎えた。

 私の息子は数学だけが得意だ。中学2年にあがった時、担任が数学教師となったので仲良くなれるかと期待していたのだけれど、残念ながら逆だった。

 しつこいようだが息子は数学しか人に誇れることがない。それなのに「書類をなくしたから」という理由で彼が1年生のときからずっと続けてきた数学係を担任は剥奪した。そして授業時間に息子を一切指名しなくなった。その期間は実に半年以上に及ぶ。

 息子は最初は「数学がニガテな子を優先して指名してるんだと思う」などと私に言っていたけれど、次第に元気がなくなってきた。

「先生と何があったの」
 と聞くと、
「僕が悪いのかなあ。すごく難しい問題を先生に聞きにいったら先生は答えられなかったんだ。その日から先生が意地悪になった気がする......」

 なんでそんなことしたんだバカと息子を叱りつつも、先生もなんとおとなげないのだろう、と私は呆れたが、保護者として「もう少し息子に優しくしていただけませんでしょうか」と学年主任らに相談に行った。しかしいくら校長先生らが取りなしてくれても、息子が指名されることはなかった。

 もちろんこの程度のことでは転校なんてしない。最後の決め手になったのは、この担任が些細なことで他の生徒達に自宅謹慎もしくは別室授業を連発するようになったからだ。

 次は自分かと怯える子どもたちが授業に集中できるはずもなく、ついには隣のクラスと期末試験の総合計点で70点も離されるという惨憺たる有様に陥ってしまった。もちろん息子の成績もずるずると低下していった。

 ちなみに息子の転学の日も、担任は「○○クンは今日で最後です」とクラスの皆に告げることもなかった。息子に別れの言葉すらかけてくれなかったという。最後まで先生は、息子を「いないものとして」扱っていた。

 私立なので毎月数万円の授業料がかかっていた。息子がいじめられてなお授業料を支払わなくてはならないという不条理さでずっと重い気分だったけれど、退学して一気に家計も気持ちもラクになった。

 息子にも無礼な一面があったかもしれない。けれど教育者としてこの担任、何かが間違っている。担任から以前受け取ったメールにはこう書かれていた。

『息子さんには悪いところが多すぎて、良いところを見つけるのは大変困難です』

 生徒の長所を見いだすことができない教師なんているだろうか。この担任のもとを去って正解だと私は考えている。


(更新 2010/1/18 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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