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退塾勧告、0円。

文・内藤みか

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 娘の塾の先生に、このたびやんわりと「お嬢さんは、もう、ついてこれないかもしれない」と言われてしまった。

 結構難しい塾である。入ったときは中間くらいだった順位もじりじりと下がり、近頃は最下位のような状態だったので、先生にそう言われてしまうのもしかたがない。

 娘のためによかれと思っての小学3年からの塾通いだった。送迎で親にも負担がかかるけれど、それでも通うことにしたのは、息子の受験の時の教訓もあった。何しろ彼は塾を5回も変わり、なかなか落ち着いて勉強することができなかった。娘は良い塾に早くから通わせることが環境として良いのではないかと考えてのことだったのだ。

 それなのにどうだろう。塾に通って1年近くになるというのに、娘からはいまだにファイトが出ない。わからない問題に根性で食らいつくことが全くない。わからない問題になるといたずら描きを始めてしまうのだという。

 息子は小学2年で小学校全課程の算数をマスターしてしまった。せっせと毎日楽しく分数問題を自作するのが彼の遊びだった。しかし娘は先へ進むこともせず、学年相応の実力しかない。その代わり毎日せっせと表情豊かなイラストを描いている。

「お嬢さんは絵を専門にやったほうがいいんじゃないか」
 塾の先生はそうアドバイスくださった。
「でも何をするにも学力は必要ではないかと思うので」
 なおも塾に残したがる私に、
「たったひとつ人生でやりたいことが見つかったんなら、それを優先すべきじゃないのか」
 と先生は続けた。

 受験科目を平均偏差値以上にできるようになることよりも、一生食べていける才能のかけらが見えたのならそちらを伸ばしてあげるべきなのではないか、塾よりも絵画教室に行ったほうがいいのでは、と。

 その日の晩、ファミレスで親子で食事をとりながら私は考えた。息子はほっておいても数学の問題を解き続けている。娘はイラストを描き続けている。同じ鉛筆と紙なのに、2人のしていることは全然違う。けれど2人とも飽きずにやっている。そして私は物語を飽きずに綴っている。

 これが個性というものか、と私は考え続けていた。たまたま息子は受験科目に才能があっただけで娘の才能は受験科目以外のところにあるのかもしれない。でもだとしたら、受験って何なのだろう? そしてそれでも塾をやめさせる決心がつかないバカ親の私がここにいる。


(次回は新年1月7日に更新します!)


(更新 2009/12/24 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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