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失恋、20万円

文・内藤みか

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年の瀬に、私は失恋した。いいなと思っていた12歳年下の男性に、ふられてしまったのである。すぐに気持ちが切り替わるわけもなく悶々(もんもん)とした日々を送り、ついに私はとあることに手を染めた。

それは、チャット占い。オンライン上で占い師に自分の悩みをリアルタイムに相談できるのだ。「彼は12歳年下です」と文字を入力すると、なんだか自分の書きかけの小説のような気がしてきて、妙に気持ちが落ち着いたのだ。

このチャット占い、1分200円ほどかかるので、結構料金がかさむ。最初のはじめましてのご挨拶で2分、身の上話を打ち込むのに5分、先生の鑑定を待っているのに3分......と、少しずつカウントされていってしまうのだ。

占い師の中には絶妙な引き延ばし技を持つ人がいた。クレジットカードでポイントを購入してチャットをするのだが、ポイントが切れる直前に、
「彼の本音はね......」
と書いたところで手を止めてしまうのだ。こちらとしては、
「本音って何? 何なの?」
と、気になり、また追加ポイントを購入してしまう。そんなことを繰り返しているうちに、あっというまに数千円が消えていくのだった。

深夜、眠れなくなると私はチャット占いに走った。延べ20人以上の占い師に相談をした。半分の占い師は「もうあきらめなさい」と私を促し、残りの半分は「彼は本当はあなたを愛しています」と希望を持たせてくれた。彼の心をつかむ呪文を教えてくれた占い師もいれば「ダメ男を好きになったあなたが悪いのよ」と叱り飛ばされたりもした。どんな言われ方をされても構わなかった。占い師がその時間、私の失った恋に寄り添っていてくれればそれで充分だった。

何度も何度も「恋が終わった」と繰り返し書くたびに、私の心も現実を認識できるようになった。そしてある日、もうこんなこと悩んでるのはバカバカしい、と占いサイトにアクセスをしなくなった。

今、私のところには20万円の請求書がある。新品のパソコンが買える金額だ。もったいない、と人は言うだろう。けれど、自分の心を整理するために私には必要なことだったのだ。

さ、次いこう、次。イケメンの年下クンと萌える、いや、燃えるような恋をするぞ~!ということでこのコラムでは、内藤の日々のオバカな行動とそれにかかったお値段を書いていきますので、どうぞよろしくお願いします☆


(更新 2009/2/11 )


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プロフィール

内藤みか(ないとう・みか)

 小説家、エッセイスト。山梨県出身。デビュー当時「ケータイ小説の女王」の異名をとリ、現在も電子書籍サイトのダウンロードランキング常連。「年下男恋愛」「イケメン」についてのコンテンツを作り続け、「イケメン評論家」としても活動。近年はイケメン恋愛ゲームのシナリオや、芝居の脚本も手がけるように。『夢をかなえるツイッター』などSNSに関する著作も。近著に『誰も教えてくれない Facebook & Twitter 100のルール』。twitterアカウントは @micanaitoh

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