fuzzy knot、初の全国ツアー【BLACK SWAN】ファイナルのライブレポが到着

2022/10/12 18:09

fuzzy knot、初の全国ツアー【BLACK SWAN】ファイナルのライブレポが到着
fuzzy knot、初の全国ツアー【BLACK SWAN】ファイナルのライブレポが到着


 ロックバンド・シドのShinji(Gt.)とRayflowerの田澤孝介(Vo、ex. Waive)からなるfuzzy knot初の全国ツアーファイナルが、10月9日(日)に新宿BLAZEにて行われた。

 fuzzy knotがミニアルバム『BLACK SWAN』のリリースに伴い、初めての全国ツアー<fuzzy knot Tour 2022 ~BLACK SWAN~>をスタートさせたのは8月11日のこと。初日はShinjiと田澤が出会った場所でもある、埼玉・HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3。終演後、楽屋を訪ねると田澤孝介が言った。「なんかね……さっき(ライブ中)も言ったけど、ステージへ上がる時に『これがファイナルになるかもしれない』と思って歌うんですよ、最近は。後悔なんて一つも残したくない。俺の全部を出し切ろうってね」。それからfuzzy knotは宮城、福岡、大阪、愛知、神奈川を回り、ついに10月9日、ツアーファイナルを迎えた。

 この日、東京では昼過ぎから雨が降っていた。会場は今年1月の東阪ライブ<fuzzy knot Live 2022 ~S.T.F.~>の最終公演でも立った東京・新宿BLAZE。会場の前で自分の整理番号が呼ばれるのを待っている人たちは、みんな長袖のシャツやニットなど、すっかり秋の装いになっている。開演30分前に場内へ入ると、すでに大勢の観客がフロアに集まっていた。

 fuzzy knotのライブではSEにShinjiと田澤が影響を受けた楽曲が流れるため、それが開演前の面白い要素の1つとなっている。布袋寅泰の「さらば青春の光」、平沢進の「BERSERK -Forces-」など90年代の名曲を聴きながら、4、50代のベテランスタッフが「めちゃくちゃ懐かしい!」「青春時代に聴きましたね!」と盛り上がっていた。

 そして18時になり「間もなくライブが始まります」というアナウンスの後、静かに会場の明かりが落ちた。ステージに青と白いスポットライトが交互に激しく光り、雷を想起させる中、まずはサポートメンバーの工藤嶺(B)と与野裕史(Dr)がステージイン。そして銀髪にオールバック、黒いアイシャドウを施したShinjiが姿を現し、無表情のまま客席に手を掲げる。同じく銀髪に黒いアイシャドウの田澤が登場し、フワッと天井に腕を伸ばした瞬間、美しくも不気味なギターのイントロが鳴り「Inferno」で幕を開けた。思わず誰もが体を動かすことを忘れて、直立でじっと見つめてしまうほど荘厳な雰囲気。ツアー初日と違うのは、楽曲の持つスケール感を見事に表現しながらも、音の中に凶暴性も加わっていることだ。田澤の伸びやかな歌声もさることながら、Shinjiのキレが明らかに違う。演奏、表情、動きにまで鬼気迫るものがあり、思わず息を呑んだ。

 1曲目からfuzzy knotの覚醒っぷりを堪能したところで、田澤が「ツアーファイナル、楽しむ準備はできてるかーい!」と観客に声を飛ばすと、フロアから一斉に腕が上がった。それを見て頷くと「好きにやってみな」と呟いて「遠隔Reviver」へ。そして「Joker & Joker」ではShinjiが自身のギターに合わせて、軽やかなステップを踏む。田澤がモニターに乗って「イエーイ!」と声を上げると、フロアに地の底から湧きかえるような熱気が生まれた。

 怒涛の勢いで3曲を披露し、観客が歓声を上げられない状況を前にして田澤が「すごい、みんなの声が聞こえた気がした。美しい世界が始まっている……」と笑みを浮かべた。「どの公演でも口にしてきたし、実際問題そういう気持ちでやってきたんですけど、(ツアー)何本目とかっていうのは僕らの都合なだけであって。確かにツアーファイナルですけど、今日が初日の人もいれば、すでにfuzzy knotのツアーを終えた人もいる。常に初日でありファイナルであると、そういう心構えでやってきました。とはいえ、まあ名実ともに今日が本当にファイナルでございます。ただ、ずっとファイナルのつもりでやってきたので、精神的には何も変わりません。今日という日を“最高”な時間にしようっていうのは、変わらないので悔いのないようにさ、俺らの全部を持って帰ってほしいと思ってるんで、最後まで楽しんでくれ。いいですか?」。田澤の呼びかけに観客は力一杯の拍手で応えた。

 「オッケー! 身も心も弾ませて行こうと思っておりますので、楽しんでいってください」と言って、4曲目「トリックスター・シンドローム」へ。Shinjiがギターを弾きながら低い体勢になり、上半身を上げ下げしてリズムを取りながら揺れている横で、田澤は音に体を預けるようにリズミカルに、力強く歌い上げる。続く「カミカゼスピリット」ではShinjiのギターソロが始まると、隣で拳をグッと握り1音1音を噛み締めるように聴く田澤。お互いの音に呼応するように演奏や歌を鳴らす姿からは、結成して1年半の間にfuzzy knotがバンドとして結束力を高めていった様子が伺える。

 「みんなが声を奪われて3年近くが経つじゃないですか。でも、物理的な問題ってだけかもね。精神的には戻ってきてるのかもね、俺たちは。だから冒頭で『声が聞こえる』と言ったのは嘘でもなんでもなくて。今回のツアーはすごくいい感じで回ってこれてるってことを、Twitterでも囀ってるんですよ。僕らそれぞれは割と活動歴の長いベテランミュージシャンですけど、fuzzy knotはまだまだ新人バンドでございます。ようやく、この前の『BLACK SWAN』で(オリジナル曲が)18曲になってね。ライブの本数も少なかったし、色々と固まっていない中でツアーをやらせてもらって。ほんまにみなさんとfuzzy knotを作れているなって感覚を得ています。今日初めてfuzzy knotを観る方にも、その成果をお見せ出来ていると思う。この先、活動を続けていく中でもっと洗練されていくし、もっとカッコ良くなっていくけれども、現時点で『これがfuzzy knotです』と胸を張って言えるものに出来ているので、引き続き楽しんでもらいたい」。そう言って、田澤はこれまで作ってきた曲についても話した。「曲を作る上でShinjiからの指示はなくて『田澤さんの思うように歌詞を書いていいよ』と言ってくれているので、曲を聴いて導かれた世界観を言葉に変えさせてもらっていて。ライブのセットリストとして、それらを並べていくと曲と曲が繋がって、思ってもいなかったストーリーになってる。それを感じてもらえる機会があるのも、ライブの良いところだなと思っております。次は『みんなの心を掴んでいろんな方向に引きずり回すセクション』です。じっくりと楽しんでもらえたらと思います」。

 前半戦の実験的であり攻撃的なナンバーを終えて、中盤戦は情熱のうねりを表しているような「深き追憶の残火」でスタートした。田澤がフロアの近くに立って歌い、その後ろでShinji、工藤、与野がトライアングルのように、互いに向き合って演奏。本来fuzzy knotは田澤とShinjiのユニットではあるが、ステージの上は4人でfuzzy knotだった。Cメロで綺麗なアルペジオをバックに「いつまでも 繋いでた指と」と儚い声で歌いながら、しゃがんで宙を見つめる田澤。「夢を置き去りに……ウワァー!」と声に力をこめた瞬間、一斉に4人の爆音が重なっていく光景は、まるでビッグバンだ。そして寸時の沈黙の後、夕焼け色のスポットライトがふわっとShinjiだけを照らすと、悲しくブルージーなギターが鳴った。「哀歌 -elegy-」だった。田澤は声を震わせるように歌うだけでなく、表情や全身を使って悲哀を表現し、最愛の人を失くした主人公の想いを憑依させて歌い上げた。

 その後「ペルソナ」を演奏すると、田澤だけが袖へはけて3人でBand Sessionが始まった。お互いの息遣いや表情を見ながら、一挙手一投足で鳴らしていく即興のブルース。そのままシームレスに「愛と執着とシアノス」へと突入。この日のライブを観ていて感じたのは生々しさである。これまでのfuzzy knotのステージは楽曲の魅力を丁寧に伝えていく印象を受けたが、今回はCDに収められていない遊び心を感じられたし、既にリリースされた音源というキャンバスの上に、絵の続きを描き足しているような演奏だった。

 中盤戦が終わり、ここでShinjiが初めて口を開く。「なんかね、世間では『夏が終わった』とか言ってますけど、終わってなかったね。チーアーだよ、この会場は」と言うと、観客がウンウンと深く頷き拍手を送った。「このツアーは1本ライブをしたら、次は2週間後に他の場所でやるっていう感じで、そんなにスケジュールが詰まっている感じではなかったんだけど、やっぱり終わっちゃうと思ったら寂しいね。あのね……昨日ふと思ったんですよ。こうやってツアーを重ねるとさ、なんかグルーヴが出来ていくんだよね。演奏もそうだけど、演奏以外のことでもね。だからもっとツアーをやっていたいなと思うんだけど、終わってしまうなって」とShinjiが言うと、田澤も「確かにね。ステージ以外の部分でもメンバーやスタッフのみんなと一緒にいれて、いろんな話をして、その時間全部がfuzzy knotをやってるなって感じなんですよね。ステージだけじゃなくて、『次の曲はこんな風にしよう』とか水面下で動いてる時も俺らにとってはfuzzy knotの時間だから。しばらく、それがなくなるのは寂しいなと思う」と言葉を重ねた。2人とってはもちろん、ファンにとってもfuzzy knotはシドやRayflowerのサイドバンドではなく、れっきとしたメインのバンドになっている。ふとShinjiが「寂しいね」と言葉を漏らすと、「じゃあ、またやろうよ」と田澤。「うん、やろう。僕がやってるシドは来年で20周年なんだよね。だからシドもいろいろと活動すると思うんです。ただね、せっかくグルーヴィにやってきたfuzzy knotをまるっきり止めてしまうのはもったいないなと思って。これからの予定は何も決まっていませんけど、ちょっと食い込ませたい」と来年への思いを口にすると、田澤も「ええやん! 僕はいつでも!」と今後の展開について士気を上げた。

 このまま次の曲へ行くかと思いきや、Shinjiが「ところでさ、卵を上手に割れるようになった?」と新しい話題を切り出す。心の中でズッコケる観客。そこから、最近チキンラーメンにハマっていて、卵を綺麗に割ることができない田澤に割り方をレクチャーする流れに。意気揚々と話すShinjiと要所要所でツッコミを入れる田澤を見て、終始フロアからは笑い声が絶えない。圧巻のライブパフォーマンスで魅了したと思いきや、MCでは夫婦漫才のような掛け合いをするギャップも実にfuzzy knotらしい。

 会場の空気が和んだところで田澤がタンバリンを持ち「Sunny Days」「こころさがし」を披露し、会場の一体感を作り上げた。そして12曲目で空気が一変する。ピアノの音とともに青いライトに照らされたミラーボールがクルクルと回り出す。ゆらゆらと場内全体を照らす光の粒は、まるで雨を表しているようだった。そんな中、演奏したのはバラード曲「キミに降る雨」。1番のAメロを歌っている時、田澤が泣きそうになっているように見えた。ラストのフレーズ「願うことが 叶うなら キミに降る雨が 優しさ溢れるものに」と歌った時、先ほどとは打って変わって表情は晴れやかになり、ステージを白い照明が包み込んでいて希望の世界が広がっていた。

 観客がしっとりとした雰囲気に酔いしれていると、田澤が静かに口を開く。「ある時期から“最高”って言葉を使わなくなったんですよ。なぜかって言うと、あまりにも“最高”と言っちゃうと『どれが1番やねん』って自分でも思うし、周りからも思われる気がしたんです。だけど、またある時からそのルールを辞めたんですよ。最高って思う瞬間があったことは真実やし、それがいくつあってもいいやんけ、と。仮に『今日、最高』と言って『前回よりも超えたってことですか?』と聞かれたとして、別に上下のことじゃないんだよね。『ああ、今最高。幸せ』と思う瞬間があるっていう事実がすごく大切なんじゃないかなって。そう思ってから、僕は毎回『最高』と言えるようになった。ここから後半戦でございますけど、より心と体をいっぱい動かして、満たされて帰ってほしいなと思っております!」。

 その後、ジェットコースターのような目まぐるしい勢いで進んでいった。「Set The Fire !」「ダイナマイトドリーム」で全員が手を挙げてジャンプ。「ダンサー・イン・ザ・スワンプ」「Hello, Mr. Lazy」「#109」と楽曲の連打が続くと、さらに心臓の鼓動が加速した。観るものを前のめりさせる求心力が凄まじい。田澤の呼びかけに、両手を上げて全身全霊で体を揺らす観客。ステージとフロアの熱気で、室内の温度は上昇していった。

 フィナーレを飾ったのは「Before Daybreak」。サビの「幸せよ 降り注げ」と歌った時、2人は同じモニターに乗り、ギターを弾くShinjiに肩を組む田澤。 互いに顔を見合わせた瞬間、ステージに全快のスポットライトが点った。そこにはキラキラした少年のような2人の眩しい笑顔があった。エンディングが流れて盛大な拍手が起きる中、嬉しそうな表情を見せてShinjiがマイクを握った。「田澤じゃないけどさ、『最高』って俺も軽々しく言いたくなくて。でも、今日最高じゃん! ありがとうございました!」。最後の挨拶を終えてShinjiがステージを去った後、1人残った田澤が真っ直ぐ観客を見つめた。「fuzzy knotの活動はしばらく空くけど、またこの生命力溢れる空間を共に分かち合おう。とにかく楽しんでいこう! 楽しんで生きていこう! 俺たちの未来は明るいぜ!」。こうして2時間におよぶ<fuzzy knot Tour 2022 ~BLACK SWAN~>のファイナルは幕を閉じた。……しかし、ここでライブレポートを終えるわけにはいかない。僕は、終演後に2人のところへ行った。


――お疲れ様でした! ツアーの手応えはどうでしたか?

Shinji「ライブをやる度に、どんどん良くなっていったよね」

田澤「MCで言っていたことは本音で。一緒にfuzzy knotを作っていけてる、みたいな感覚がありましたね。それはスタッフも込みでね。毎ライブ後『この曲のあそこはこうした方が良いと思うよ』とか、みんなの考えを反映して色々と見つけていけたツアーでした。そういう意味では、ほんまにみんなで作っていけた感じがして、それが嬉しかったですね。なかなか、ないじゃないですか? ベテランになってくると(笑)。人の言うこともあんまり聞きたくないし」

――キャリアを重ねれば重ねるほど、自分のやり方が固まっていきますしね。

田澤「だけど、今回はすぐに取り入れました。『あそこはこうだと思うよ』『じゃあ、やりましょう!』みたいな。セットリストも初日とはMCの位置も変わったりしてるので、その辺もみんなで作っていきましたね」

――今回のツアーは一発目に「Inferno」から始まる構成でしたね。初日も素晴らしかったですが、今日はパフォーマンスの凄みが格段に向上して見えました。

田澤「自分らの魅せ方を覚えていったのかもしれないですね。実際に鳴らしてみて分かることって多いじゃないですか。そういう意味では、最初と最後を観ていただいて差を感じたのは嬉しい意見ですね」

Shinji「あれが1曲目で良かったよね」

――生感がすごかったんですよね。その場でしか聴けない演奏というか、バンドの生々しさを感じたのが印象的でした。

田澤「うん。前までは『音源を忠実に再現しよう』ってスタンスだったかも。今回のツアーはそれを辞めて『今歌いたい、今鳴らしたいことをやろう』みたいに決めていたんです。だからこそ、生感というかライブ感を感じでもらえたのかなと思います」

Shinji「最初の頃はね、覚えるだけで精一杯な感じだったから。活動を通して、本当に変わっていったよね」


 こうして2ヶ月に渡るfuzzy knotの初全国ツアーが終わった。MCでも話していた通り、今後の予定はまだ決まっていない。次はいつ、ステージで2人の姿を見れるのだろうか。そして、今度はどんな世界を見せてくれるのだろうか。

 本公演の様子は、後日VR動画で配信が決定。詳細はオフィシャルサイトをチェック。


Text by 真貝 聡
Photos by 江隈 麗志


◎公演情報
【fuzzy knot「fuzzy knot Tour 2022 ~BLACK SWAN~」】
2022年10月9日 新宿BLAZE セットリスト
01. Inferno
02. 遠隔Reviver
03. Joker & Joker
04. トリックスター・シンドローム
05. カミカゼスピリット
06. 深き追憶の残火
07. 哀歌 -elegy-
08. ペルソナ
09. 愛と執着とシアノス
10. Sunny Days
11. こころさがし
12. キミに降る雨
13. Set The Fire !
14. ダイナマイトドリーム
15. ダンサー・イン・ザ・スワンプ
16. Hello, Mr. Lazy
17. #109
18. Before Daybreak

https://www.fuzzyknot.com/

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