<ライブレポート>マハラージャン、ファンキーな音楽とユーモアでLINE CUBE SHIBUYAを包み込んだ初ワンマン
<ライブレポート>マハラージャン、ファンキーな音楽とユーモアでLINE CUBE SHIBUYAを包み込んだ初ワンマン

 マハラージャンが、ワンマンライブ【レッツ・ターバン!】を7月22日に東京・LINE CUBE SHIBUYAにて開催した。

 2021年3月にEP『セーラ☆ムン太郎』でメジャーデビュー、同年6月には『THE FIRST TAKE』への出演を果たし一躍注目を集めていたマハラージャン。彼にとって、記念すべき初めてのワンマンライブとなった東京公演の模様をレポートする。

 会場が暗転すると、ステージの幕に身幅の3倍ほど大きい、丸い頭をした人のシルエットが映し出された。マハラージャンのトレードマークともいえるターバンをデフォルメした姿に、会場からは期待の大きな拍手があがる。幕が上がると、まばゆい照明のなかで1曲目「正気じゃいられない」がスタート。トラメガを片手に歌唱するマハラージャンを、バンド隊とホーン隊、計7人のサポートメンバーが力強く支える。続く「次いくよ」では、イントロで「踊れるかー!」と大きな声で煽り、観客の緊張をほぐす姿も。4th EPの表題曲であるポップ・ロックチューン「僕のスピな人」ではエレキギターを手にとり、爽やかに会場を踊らせた。

 最初のMCタイムでは、「今日は初のワンマンライブ、ありがとうございます。こんなにたくさんのお客さんに来てもらえるなんて思ってなかったです」と、3階まで埋まった会場を見渡し、まずは感謝を述べるマハラージャン。「下北沢のライブハウスで、10人くらいのお客さんの前でこの金のラジカセで音を出して、ギター弾いて歌ってたんですよ」とインディーズ時代を振り返ると、続けて当時『星野源のオールナイトニッポン』の「星野源アワード2018」で最優秀ジングル賞を獲得した楽曲「ねぇ、ねぶって」をジャジーに歌い上げた。

 また、「次の曲は初心にかえって、ひとりでやらせてもらおうと思います」と宣言して披露されたのは「空ノムコウ」。彼の声の甘さが引き立つアコースティックギター1本での弾き語りスタイルに、観客もゆったりと耳を傾ける。次の「比べてもしょうがない」では皆川真人(Key.)と竹上良成(Sax.)を招き入れ、ムードたっぷりのアレンジを披露。また「eden」では、ギター・ベース・ドラム・キーボードのバンド編成に。力強いビートと切り裂くようなギターの音色が生み出すセッション感に、席に座りながら思わず体を揺らす人もいた。

 「別れた彼女の歯ブラシで便器を磨いたこと、ありますか? 僕はあります」との告白に続けて演奏されたのは、最新アルバム『正気じゃいられない』からの新曲「君の歯ブラシ」。軽やかなビートとギターのカッティングが爽やかで、衝撃的な歌詞とのギャップが面白い。同じく最新アルバム収録の新曲「その気にさせないで」では、晴れた日の外のように明るいステージのなか、サビでは皆川の澄んだコーラスが重なり、会場をハッピーなムードで包み込んだ。

 MCタイムに入ると、ステージからまきやまはる菜(Ba.)の姿が消えている。マハラージャンが「誰かベース弾ける人いませんか!?」と会場に呼びかけると、ちらほら手が挙がるなか、マハラージャンの指名でひとりの男性が壇上へ招かれた。男性が壇上に上がりマスクを外すと、その正体はOKAMOTO’Sのハマ・オカモトというサプライズが。渡されたマイクで「東京でバンドやらせていただいてます、OKAMOTO’Sのハマ・オカモトです」とハマが自己紹介をすると、会場は興奮に包まれた。そしてMCは、マハラージャンのメジャーデビュー時からの付き合いという彼らの思い出話に。マハラージャンからの「最初なにも面識のない状態でオファーさせていただいたのに、なんで受けてくれたんですか?」という本音の質問に、ハマが「名前が面白かったのと、最初のやつ(1st EP『いいことがしたい』)のジャケットも調べたら出てきて、なんか面白そうって。それだけです。会ってみたいなって」と素直に応え、マハラージャンも「面白くてよかったです!」と喜ぶ姿をみせた。ハマの「どう思います? みなさんお仕事されてると思いますけど、初めて会った取引先、仕事先の人から今回のプロジェクトは『セーラ☆ムン太郎』です、って言われたら」という言葉には、思わず吹き出してしまう観客も。

 澤村一平(Dr.)も参加したという未発表の新曲の小話も挟みつつ、NHK『シブヤノオト』で楽曲提供者として共演したときの思い出を語り終えると、ハマがベースを手にとり、その思い出の楽曲「貞☆子」へ。曲前でマハラージャンが「コロナ禍へ思いを馳せた曲」と語っていたとおり、人との触れ合いへの思いをテーマにした歌詞と、それを体現するようにセッションを楽しむメンバーの姿に、観ていてこちらも自然と笑顔になる。そして、まきやまがステージに戻り本編最後の曲「セーラ☆ムン太郎」のイントロが流れ始めると、会場のボルテージは最高潮に。ミラーボールのキラキラした光がさながらディスコのようで、観客も自然と踊り出す。途中、ハマとまきやまのベースソロバトルでは観客も大きな手拍子で煽り、ステージと客席がひとつになって音楽を楽しんでいるようだった。

 アンコールでは、ターバンをえんじ色に巻き直し登場。お知らせとして、11月から初の全国ツアー【夢】を開催することを発表すると、そのユニークなタイトルに観客も笑顔に。「とっておきの、インディーズの頃の曲を聴いてください!」と告げると、「ちがう」と「いいことがしたい」を披露。音の隙間に聴こえる、観客の手拍子の音が力強い。「今日のこの時間は、自分のなかでは“情熱のリレー”みたいなものじゃないかと思っていて。会社員をやっていたけど、どうしても音楽がやりたくて……聴いてくれているみなさんや、バンドメンバーのおかげでここまでくることができました」「情熱があって、ここまでこれたと思っているので。みんなにこの情熱が少しでも伝わって、やりたいことをやってみようっていう力になったら嬉しいなと思って。そういういい時間になってましたかー!?」と会場に呼びかけると、最後に演奏されたのは「何の時間」。最後まで会場を笑顔とファンキーなグルーヴでいっぱいに包み込み、ステージを終えた。

 8月5日に開催された同ツアーの大阪公演も、満員御礼で終えたマハラージャン。11月からの全国ツアーでも、ファンキーな音楽と持ち前のユーモアで会場を踊らせてくれることだろう。

Text by Maiko Murata
Photo by Taichi Nishimaki

◎公演情報
【レッツ・ターバン!】
2022年7月22日(金) 東京・LINE CUBE SHIBUYA
2022年8月5日(金) 大阪・心斎橋BIGCAT