<ライブレポート>佐藤千亜妃が配信ライブ【NIGHT PLANET】で見せたミュージシャンシップ、ジャンルもキャリアも超えた最新パフォーマンス 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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<ライブレポート>佐藤千亜妃が配信ライブ【NIGHT PLANET】で見せたミュージシャンシップ、ジャンルもキャリアも超えた最新パフォーマンス

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<ライブレポート>佐藤千亜妃が配信ライブ【NIGHT PLANET】で見せたミュージシャンシップ、ジャンルもキャリアも超えた最新パフォーマンス

<ライブレポート>佐藤千亜妃が配信ライブ【NIGHT PLANET】で見せたミュージシャンシップ、ジャンルもキャリアも超えた最新パフォーマンス


 佐藤千亜妃が8月14日、ワンマンライブ【Streaming live "NIGHT PLANET”】を開催した。

 2019年11月にソロ名義初のアルバムとなる『PLANET』をリリースした佐藤。7月からは同作を引っ提げ、東京を含む5都市を巡る予定が組まれていたが、ご存じの通り、新型コロナウイルス感染症の猛威はなかなか衰えず、ツアーは全公演中止を余儀なくされた。そういった状況を踏まえ、本来ならばツアーファイナルの開催日だったはずのこの日、配信ライブという佐藤にとって初めてのチャレンジとなる形式で行われたのが今回のワンマンだ。

 定刻の19時、ライブはアルバム表題曲の「PLANET」からスタート。チルなネオソウル風味のナンバーで、佐藤がソロワークスで志す“打ち込みサウンドの探求”という一つのモードを分かりやすく体現したアルバムのエンドトラックだが、それを今回は生のバンドサウンドがライブ仕様に再構築していく。バンドには宗本康兵(Key)、木下哲(Gt)、種子田健(Ba)、神宮司治(Dr)という4人のサポートメンバーが迎えられ、佐藤を含む5人は円形で並び、互いに向き合い、セッションのような布陣でパフォーマンスに臨んだ。また、照明は演者に当てるスポットライトに加え、スティック型のLEDライトがところどころに配置され、シンプルながらも色鮮やかに、美しく楽曲の世界観を表現していく。

 2曲目の「Summer Gate」では、種子田のアップライトベースがふくよかな低音を鳴らし、音源で聴くよりもずっと艶やかなムードを漂わせつつ、各パートのソロ回しもばっちり決まる。続く「Lovin' You」も「Summer Gate」に勝るとも劣らないメロウなR&Bナンバーで、重心をグッと下に落とした演奏が心地よく、聴き手を芳醇なグルーヴでほろ酔わせていく。さらにそうした陶酔の最中にも、聴き手の意識をハッと覚醒させるスパイスとして、木下のギターソロが炸裂。個々の優れたプレイヤビリティに裏打ちされた、調和と遊び心を兼ね備えたパフォーマンスだ。

 04 Limited Sazabys、Tondenhey(踊Foot Works)、だいじろー(JYOCHO)など、多彩なアレンジャー陣を迎えたアルバム『PLANET』は、アルバム全体の物語性や画一性よりもむしろ、楽曲単位での実験性やミクスチャー感覚が何よりも印象的な1枚だ。自身のツアーはもちろん、フェスなどのイベントも次々と中止が決まり、アーティストたちが生のパフォーマンスを披露する機会を完全に失いつつある今日だからこそ、そんな意欲作にようやくバンド演奏による命が吹き込まれ、楽曲が嬉々として躍動していく、その喜びが他ならぬ佐藤自身の一挙手一投足からにじみ出ていたように思う。とりわけファンクの高揚に満ち溢れたポップチューン「You Make Me Happy」では、パフォーマンスの充実感が画面越しのこちらにもひしひしと伝わってきた。

 音源化こそされていないものの、ライブでは何度も披露されており、すでにファンのあいだで名曲の呼び声高い「リナリア」を経て、メンバー紹介のMCパートへ。何気ない話題(食べ物の話が大半)でひとしきり盛り上がったあとは、こちらも未音源化の楽曲「橙ラプソディー」を弾き語りで披露。先ほどまでの和やかな雰囲気から一転、水を打ったような静寂に澄んだアコギの音色が沁みわたり、佐藤は一切の飾り気をそぎ落とし、たっぷりの情感を込めた歌声を響かせていく。

 そして中盤、映画『転がるビー玉』主題歌として書き下ろされた「転がるビー玉」を転換点に、ライブは再びアルバム『PLANET』の世界に戻っていく。「Spangle」や「lak」といった優し気なサウンドで淡いアンビエンスを紡ぐ楽曲、佐藤のメロディシンガーとしての歌がひたすら映えたエピックなロックバラード「面」「空から落ちる星のように」など、改めて『PLANET』というアルバムの特性――カメレオンよろしく楽曲単位でドラスティックに変わっていく作風、個性のバラエティを明らかにしていく流れだ。

 効果的なピアノアレンジと直情的なボーカル、加えて迫真のカメラワークもドラマティックだった「大キライ」と、佐藤自身の死生観が色濃く映し出された「キスをする」の本編エンディング、さらにきのこ帝国のレパートリーから「春と修羅」と「夏の夜の街」をセルフカバーしたアンコールへ至るフィナーレは、バンド時代からソロキャリアまでを一気に縦断した、文句なしに胸を熱くさせるクライマックス。ソロデビュー以降の彼女はもちろん、そこに地続きで繋がっているきのこ帝国のフロントマンとしての彼女までを含めた、佐藤千亜妃というアーティストのミュージシャンシップを余すところなく伝えた配信ライブだった。

Text by Takuto Ueda
Photo by 石崎祥子(THINGS.)

◎公演情報
【Streaming live "NIGHT PLANET”】
2020年8月14日(金)
<セットリスト>
01. PLANET
02. Summer Gate
03. Lovin' You
04. You Make Me Happy
05. リナリア
06. 橙ラプソディー
07. 転がるビー玉
08. 面
09. Spangle
10. lak
11. 空から落ちる星のように
12. 大キライ
13. キスをする
En
14. 春と修羅(きのこ帝国)
15. 夏の夜の街(きのこ帝国)

<バンドメンバー>
Key:宗本康兵
Gt:木下哲
Ba:種子田健
Dr:神宮司治


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