シアラ『ビューティー・マークス』(Album Review) 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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シアラ『ビューティー・マークス』(Album Review)

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シアラ『ビューティー・マークス』(Album Review)

シアラ『ビューティー・マークス』(Album Review)


 リル・ジョンが火付け役となった“クランク”を取り入れ、デビュー曲にして自身初の全米No,1獲得を果たした「グッディーズ」のリリースから、今年で15目を迎える。目力のある美しい顔立ちに、見事なブロンドのロング・ヘア。スラっと伸びた長身で凄まじいパフォーマンスをする、見事なダンス・テクニック。何をとっても完璧だったシアラだが、決して過去形ではなく、33歳になった今もそのいずれも衰えてはいない。

 米テキサス州出身。マイケル・ジャクソンやデスティニーズ・チャイルドといったスーパースターたちに憧れ、ダンスに目覚める。学生時代はチアリーダーも務め、高校を卒業するタイミングでプロデューサーのジャジー・フェイにスカウトされ、デビューに繋げる。

 2004年、前述のデビュー曲「グッディーズ」で華々しいスタートを切り、同年発表のデビュー・アルバム『グッディーズ』が、全米アルバム・チャート“Billboard200”で3位、R&BチャートではNo,1を記録する大ヒットとなる。本作からは、「ワン・ツー・ステップ」や「Oh」といったTOP10ヒットも生まれ、2006年の2nd『シアラ:エボリューション』はアルバム・チャートで初の1位獲得を果たした。

 2009年の3rdアルバム『ファンタジー・ライド』も同チャート3位を記録するスマッシュヒットとなったが、翌2010年の4th『ベーシック・インスティンクト』は商業的に失速。これを受けて、3年のブランクを経てリリースした復帰作『シアラ』(2013年)が全米2位を記録。前作『ジャッキー』(2015年)もR&Bチャート2位の改進をみせ、再びシーンに返り咲いた。

 本作『ビューティー・マークス』は、その『ジャッキー』から約4年ぶり、通算7作目となるスタジオ・アルバム。これまでと違うのは、自身が設立したレーベル<Beauty Marks Entertainment>からのリリースであること。同レーベルは、音楽のみならず、映画やファッション、ボランティア、起業など幅広いプラットフォームとなっているという。

 本作からは、前年夏にリリースされた「レベル・アップ」が、“ダンスチャレンジ動画”としてSNSでバズり、アルバムのプロモーションに繋げた。同曲は、シアラと米アトランタ出身のソングライター・デュオ=ロック・シティとの共作で、プロデュースは南アフリカ出身のJ.R.ロテムが担当している。サンプリングソースとして起用した、DJテリー・テルズの「ファック・イット・アップ・チャレンジ」がアクセントになった、まさに“踊るため”の曲。ボーカルというよりはラップ曲に近い感じで、最新の流行もしっかり取り入れている。次に収録された「セット」も、ヒップホップをベースとしたダンス・トラック。「レベル・アップ」は、ミッシー・エリオットとファットマン・スコープをフューチャーしたリミックスも収録されている。

 リリース1か月前に発表した先行シングル「シンキン・バウト・ユー」は、これまでのシングル曲にはなかったタイプの、超キュートなダンス・ポップ。この曲については、「本当に好きな人に出会えた時の感情をそのまま表現した」と話していて、ハッピーなサウンドに心躍るのも、こういったコンセプトがあるからだろう。泡風呂でゴキゲンに歌うシーンからはじまるミュージック・ビデオでは、2人の子供を出産したとは思えない、見事なプロポーションを披露している。

 ナイジェリアのミュージシャン、テクノをフューチャーしたシングル「フリーク・ミー」は、クイーン・オブ・アフロビートことティワ・サヴェジの「Before Nko」(2015年)をサンプリングした、アフリカン・テイストの好曲。この曲も「レベル・アップ」同様、JR・ロテムによるプロデュースで、SNSでも再びダンス動画がヒットした。2月に発表したシングル「グレイテスト・ラヴ」も、ソングライターにロック・シティがクレジットされている。「グレイテスト・ラヴ」は、ラップを交えて歌う90年代風味のR&B~ヒップホップ・チューンで、ミュージック・ビデオがライトアップ効果で超カッコイイ仕上がりになっている。

 シアラの「ライド」(2010年)や、ジャスティン・ビーバーの「ハートブレイカー」(2013年)などを手掛けるシンガー・ソングライター/ラッパーのメイジャーが、ソングライターとして参加したミディアム・メロウ「トラスト・マイセルフ」では、ダンス曲とは対照的なしっとりとしたボーカルを聴かせる。最新のダンストラックからアダルト・コンテンポラリー系まで、何でもこなしてしまうボーカリストとしての実力も、もっと評価されるべきだろう。それが存分に発揮されたのが、アルバムのエンディングを飾る「ビューティー・マークス」だ。

 「ビューティー・マークス」は旋律の美しいピアノ・バラードで、ディーバ特融の熱唱系ではないが、力まずも説得力のあるボーカルが持ち味となっている。ソングライターには、エミネム&リアーナの「ラヴ・ザ・ウェイ・ユー・ライ」(2010年)で知られる女性シンガーソングライター=スカイラー・グレイも参加していて、彼女特融の“耳の残る”フレーズもいくつか登場する。結婚式の様子が描かれたミュージック・ビデオでは、ウエディングドレス姿も披露。モノクロのシーンで自然と涙がこぼれるシーンには、思わずグっときた。

 カニエ・ウェストやミゲルの作品にも参加している、ベニー・カセットがプロデュースに携わった冒頭の「アイ・ラヴ・マイセルフ」は、フューチャリング・ゲストのマックルモアによる長編ラップが効果抜群のミディアム・チューン。これもクールでいい曲だし、自身も敬愛するケリー・ローランドをボーカル・ゲストとして迎え入れたトラップ「ガール・ギャング」も、シアラらしい、クールなナンバーに仕上がっている。「ガール・ギャング」には、90年代~2000年代にかけて大ヒットを連発したベテラン・プロデューサー=トリッキー・ステュワートが制作陣として参加した。

 ここ数年のアルバムは、良質ではあるものの、若干地味な印象を受けた。本作では、そういったイメージを払拭すべく、華やかなダンス・トラック~メロウ・チューンがそろっている。デビュー作よりも勢いがある…というのは言い過ぎかもしれないが、それくらいインパクトに残る作品だった。Text:本家一成

◎リリース情報
アルバム『Beauty Marks / ビューティー・マークス』
2019/6/5 Release
WPCR-18213 2,000円(tax out)


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