都会のオアシスで開催された、井上道義と新日本フィルによる野外クラシック・コンサート
都会のオアシスで開催された、井上道義と新日本フィルによる野外クラシック・コンサート

 前日まで降り続いた雨も無事に止み、10月6日 日比谷野外大音楽堂で、「日比谷野外オーケストラピクニック」が開催された。

 いつものスーツ姿ではなく白いTシャツ姿の新日本フィルハーモニー交響楽団の準備が整うと、指揮者 井上道義が、颯爽とステージに登場。観客に挨拶をすると早速、コンサートが始まった。
一曲目は、J.シュトラウスIIの「常動曲」。この曲は八小節の主題の繰り返しで、どうやって終わるかは指揮者に委ねられているというユニークな曲。この日は、演奏の途中で井上道義が突然振り向き「実はね、この曲は、いつまでも終わらないんですよ。どうしようかなあ。じゃんけんで負けたら止まるんだけど。」と客席に話しかけ、前方に座っていた少年とじゃんけんが始まった。見事、少年が勝ち一曲目はストップ。そのまま客席の子供たちと掛け合いをしながら、和気あいあいとコンサートは進んでいく。

 続いて、井上道義が指揮台からピアノへと移動すると、優しいピアノとともに、スタジオジブリの名曲が3曲続けて演奏された。心地良い風と新日本フィルの温かい音色に身を委ねていると、小さい頃から何度も観たトトロやキキの姿が、瞼に浮かんでくる。さらに、熱演が先程まで空を覆っていた雲を吹き飛ばし、晴れ間も少しずつ見え始めた。

 5曲目は雰囲気をガラリと変え、マーラーの交響曲第7番 ホ短調「夜の歌」からフィナーレ。リラックスした空間の中で、子供たちも気構えずに全身でマーラーを楽しんでいる姿が印象的。そして、最後は某携帯会社のCMでお馴染みのバレエ≪くるみ割り人形≫より「あし笛の踊り」。野外にも関わらず、フルート三重奏も美しく伸びやかに響き渡った。アンコールは組曲≪展覧会の絵≫より「キエフの大きな門」で、壮大な新日本フィルのハーモニーが空高く鳴り響き幕を閉じた。金木犀の香りや、木々のざわめき、爽やかな秋風のおかげで耳だけでなく、五感で音楽を楽しめたクラシック・コンサート。是非、次回は違う季節や夜空の下でも聴いてみたい。

◎公演概要
【日比谷野音90周年記念事業 日比谷野外オーケストラピクニック】
日時:2013年10月6日(日)1回目14:15 / 2回目16:30
会場:日比谷野外音楽堂
出演:井上道義(指揮)、新日本フィルハーモニー交響楽団
主催:日比谷野音90周年記念事業実行委員会 / KAJIMOTO / (公財)新日本フィルハーモニー交響楽団
音響協力:ヤマハ株式会社

曲目:
J.シュトラウスII:常動曲
久石譲:「あの夏へ」(『千と千尋の神隠し』から)、『魔女の宅急便』から、『となりのトトロから』
マーラー:交響曲第7番 ホ短調「夜の歌」から フィナーレ(第5楽章)
チャイコフスキー:バレエ≪くるみ割り人形≫「あし笛の踊り」
En.
ムソルグスキー:組曲≪展覧会の絵≫第10曲「キエフの大きな門」

写真(C)Hikaru Hoshi