12-24mm F4 DG HSM ART
12-24mm F4 DG HSM ART

3代目の広角ズームは歪曲なしでF値固定

2003年、シグマから超広角ズームレンズの12-24mm F4.5-5.6EXDG ASPHERICAL/HSMが登場した時は話題を集めた。35ミリ判フルサイズのイメージサークルをカバーしているが、その当時増え始めたAPS-Cフォーマットのデジタル一眼レフ用超広角ズームレンズとして用意されたという面もあったのだろう。ただし、このレンズで撮影した往時の画像を見ると、厚ぼったいような描写で、透明感に乏しく画像の均質性もいま一つの印象。とはいえ、APS-Cサイズなら、35ミリ判換算でおよそ18.36ミリ相当の画角になり、かつ画面の周辺部がカットされているので、十分な実用性能を持っていた。11年には、改良型の12-24mmF4.5-5.6II DGHSMが登場する。

 ワイド端12ミリというのは、広角ズームレンズでもかなり広い画角で、これをカバーするカメラメーカー純正レンズは少ない。15年にキヤノンが最も焦点距離が短いワイド端を持つEF 11-24mm F4L USMを発売するが、加工にコストのかかる研削非球面レンズの採用など、性能のためなら何でもやろうという贅沢で意欲的に設計されているが、実売で40万円を超える価格となり、気軽に買えるものではない。

 そして先のフォトキナで発表されたのが、このレンズだ。ワイド端側の焦点距離はキヤノンのそれには1ミリ及ばないが、超広角ズームレンズのパイオニアともいえるシグマが必ず製品化せねばならない仕様だったといえる。キヤノンの半分近くの価格で購入できるのはありがたい。

 本レンズはシグマの中でも最高性能を追求したアートラインに属し、外観の仕上げも統一され高級感がある。レンズ前面は82ミリのガラスモールド非球面レンズ。驚くほど大きく曲率も強く、重量も1150グラムとすごい迫力だ。開放F値は全域F4になり、より使いやすく、ワンランク上の製品に改良されている。

 画質は開放から完全に実用になる見事なもの。周辺光量もこのクラスとしては豊富、「ゼロ・ディストーション」と宣伝するだけあり歪曲収差補正も良好で、カメラを水平に保持すると、パースペクティブを抑制でき自然な再現が期待できる。純正レンズと異なりカメラ内での各種収差補正は行われない不利な条件だけに、シグマ設計陣の底力を感じさせる高性能レンズに仕上がっている。

ワイド端でも画面の周辺域まで解像力、コントラストも良好。ヌケのよい写真になった。画質の均質性がよいのは素晴
<br />らしい。ややカメラアングルを上方向にふって超広角12ミリの強いパースペクティブを生かしてみたが、嫌みのない描写
<br />だ●12ミリ時・キヤノン EOS 5D MarkIV・AE(絞りf8・500分の1秒・-0.3補正)・ISO200・AWB・RAW
ワイド端でも画面の周辺域まで解像力、コントラストも良好。ヌケのよい写真になった。画質の均質性がよいのは素晴
らしい。ややカメラアングルを上方向にふって超広角12ミリの強いパースペクティブを生かしてみたが、嫌みのない描写
だ●12ミリ時・キヤノン EOS 5D MarkIV・AE(絞りf8・500分の1秒・-0.3補正)・ISO200・AWB・RAW
テレ端側、開放絞りで撮影。至近距離だが、画質は良好。ボケ味を語るようなF値と焦点距離ではないが、後ろのボケをみると自然な雰囲気である。明確な撮影目的がないと携行には覚悟が必要な大きさと重さだが、超広角レンズ好きにはたまらない一本になるだろう●24ミリ時・キヤノン EOS 5D MarkIV・AE(絞りf4・640分の1秒・-0.3補正)・ISO400・AWB・RAW
<br />
テレ端側、開放絞りで撮影。至近距離だが、画質は良好。ボケ味を語るようなF値と焦点距離ではないが、後ろのボケをみると自然な雰囲気である。明確な撮影目的がないと携行には覚悟が必要な大きさと重さだが、超広角レンズ好きにはたまらない一本になるだろう●24ミリ時・キヤノン EOS 5D MarkIV・AE(絞りf4・640分の1秒・-0.3補正)・ISO400・AWB・RAW

◆赤城耕一

●焦点距離・F値:12~24ミリ・F4●レンズ構成:11群16枚(FLDガラス5枚、非球面レンズ3枚)●最短撮影距離:24センチ(24ミリ時)●最大撮影倍率:1:4.9●画角:122.0~84.1°●フィルター径:使用不可●マウント:ニコン、キヤノン、シグマ●大きさ・重さ:φ102.0×131.ミリ・1150グラム●価格:税別22万円(実売18万9000円)●URL:http://canon.jp/