「おまえはここに何をしに来た」 写真家・渋谷敦志を問い続けた目

  • エチオピア・アファール州(2013年)。ダナキル砂漠へ塩の採掘に向かうキャラバン。人類発祥の地とされる大地溝帯にある「人類が住むことができるもっとも暑い場所」。ここに暮らすアファール人は先史時代以来、主に家畜の遊牧を営みながら、塩の交易を通じて外世界との接触と交流をおこなってきた(撮影:渋谷敦志)
  • アンゴラ・ウアンボ州カアラ(2000年)。反政府武装勢力UNITAに反抗したため、見せしめに腕を切断され、精神を病んだ男性。人心に恐怖を植えつけ、抵抗心を削ぐために、四肢や指、耳などを切断する戦術が横行していた。1975年にポルトガルから独立して以来続く戦禍は、すでに四半世紀におよんでいた(撮影:渋谷敦志)
  • カンボジア・プノンペン、トゥールスレン(2003年)。ポル・ポト政権下、政治犯収容所「S21」で処刑された囚人の写真。現在、虐殺博物館となっているこの施設には、首切りの絵や拷問器具、囚人を監禁する鉄の足かせなど、虐殺を物語る証拠品が展示されているが、その中でぼくをもっとも震え上がらせたのは、処刑される直前に撮影された囚人たちの写真だった(撮影:渋谷敦志)
  • ソマリア・モガディシオ(2011年)。女子割礼を終えたばかりの避難民の少女。痛みに耐えた褒美の飴をにぎりしめている。女子割礼とは女性の外性器の一部または全部を切除する行為。ユニセフの報告によれば、ソマリア人女性の約98%が女子割礼を経験している。ソマリアは1991年から続く内戦で国土は分断され、国家機能は崩壊、事実上の無政府状態が続く(撮影:渋谷敦志)
  • 福島県南相馬市原町区(2011年)。萱浜の消防団の人たち。東日本大震災の直後に起きた原発事故の影響で救助が入らず、孤立無援の状況となるなか、上野敬幸さん(前列中央)を中心とした地元消防団が津波による行方不明者を捜索した。上野さんは8歳の長女と3歳の長男、両親を津波で奪われた。行方不明の長男と父親をいまも捜し続けている(撮影:渋谷敦志)
  • ギリシャ・レスボス島(2019年)。モリア難民キャンプ。中東やアフリカから欧州を目指す難民・移民が行き場を失って、先が見えない状態で勾留されている。収容可能人数3000人の5倍近い難民が密集して暮らす。金網のフェンスの外には「ジャングル」と呼ばれるオリーブ畑が広がり、モリアからあふれ出た難民がそこで暮らす(撮影:渋谷敦志)
  • ケニア・カクマ難民キャンプ(2020年)。ケニア国境地帯にある「カクマ(どこでもない場所)」という名の難民キャンプで撮影。陸上長距離走のトレーニングに励む難民アスリートたち。走ることで自分たちを隔離する境界線を越えていく。そんな強い意思とエネルギーを感じながら撮影した(撮影:渋谷敦志)
  • ギリシャ・レスボス島(2019年)。Border(境界線)なき世界を、ぼくたちは想像できているのだろうか。「No borders(国境がない)」という落書きを町のところどころで見た。生きる望みを絶たれてもあきらめず、勇敢に海を越えてくる者たちに向けられた歓待のメッセージだろうか(撮影:渋谷敦志)
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