ほぼ横並びの設定温度に大きく差をつけているのが都営大江戸線だ。普通車はなんと22度、弱冷房車でも24度に設定しているのだという。暑がりの人にとっては、灼熱の都会のなかでまさにオアシスのような空間かもしれないが、寒がりにはちょっとこたえる。大江戸線での通勤利用歴3年の記者も、風の吹き出し口近くに立つと体がキンキンに冷えることがある。乗降客で押されながらも吹き出し口付近に流れ着くと、乗車直後の暑いうちは心の中でガッツポーズ。だが、15分ほど乗っていると寒くなるので、カーディガンは必需品だ。他の路線より涼しいと感じることはあったが、22度とは驚きだった。
大江戸線といえば後発で建設された路線のため、通常より地下深い場所を通っているが、それと関係があるのだろうか。大江戸線の設定温度が低い理由を東京都交通局の広報担当者はこう説明する。
「大江戸線は他の地下鉄車両と比較して小型の車両であり、空気の流れが通りにくいことから普通車、弱冷房車ともに他の地下鉄より低い温度設定としています」
■「暑い」「寒い」両方の声 鉄道各社の対策は?
JR東日本では2016年3月から山手線に新型車両E235系を導入した。液晶ディスプレイなどが設置され、見た目にも“新しい”印象を受けるが、同車両には「予測空調」という機能も搭載されている。これは、時間帯や走行位置、乗車率の関係を記録し、車内が混雑する前にあらかじめ設定温度が下がるようになっている。2018年8月1日時点で21編成231両が同車両として運用されており、2020年春ごろには山手線の全車両が切り替わる予定だという。
同社ではスマートフォンアプリ「JR東日本アプリ」をリリースしている。時刻表や運行情報などのベーシックな機能はもちろんだが、アプリ内にある「山手線トレインネット」という項目では電車の混雑度や車内温度を見ることができる。
また、京王電鉄では車内温度を快適に保つべく、ラッシュ時の車両温度を収集。温度が均等になるように風の吹き出し口の大きさや形状を改善しているという。他にも、車掌による「空調説明放送」を行い、稼働状況の周知を図る。
「乗降時の温度変化を減らすため、開扉時には冷房機能を強くするよう自動制御している」と答えるのは小田急電鉄だ。同社では車内の温度や湿度に応じ、乗務員判断で冷房温度を1両単位で調整することができるという。