太平洋戦争末期に、特攻帰還者を幽閉する「振武寮」という施設があった。そこでは上官が帰還兵を殴打し、怒声を浴びせ、再び生きて戻ることは許されない、と思わせる精神教育が行われた。2009年に出版された『特攻隊振武寮 帰還兵は地獄を見た』は、元特攻隊員が知られざる内幕を明かした、驚愕のノンフィクションだ。
鴻上尚史さんのベストセラー『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』は、実はこの『特攻隊振武寮』からヒントを得て書かれたのだという。鴻上さんが本書から受けた衝撃とは?
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『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』という本を書きました。9回出撃して、9回生還した陸軍一回目の特攻隊員、佐々木友次さんに関する本でした。
じつは、佐々木さんという存在を教えてくれたのが、この『特攻隊振武寮』でした。
この本の中の「ところで佐々木だが、その出撃はトータルで8度に及び、周囲が死に追い立てるのをあざ笑うかの如く、ことごとく生還している」という文章に衝撃を受けた所から、僕の佐々木友次さんに対する旅は始まったのです。ですから、この本を読んでいなければ、『不死身の特攻兵』も生まれませんでした。佐々木さんの存在を教えて下さった著者の渡辺考さんには、感謝しかありません。
2009年に出版されたこの本を手に取ったのは、特攻に出撃し、帰ってきた隊員を軟禁する『振武寮』という理不尽そのものの存在に衝撃を受けたからです。
僕は子供の頃から、特攻隊に特に関心がありました。理解したいのにできない、という理由が大きかったと思います。どうしてそんな戦術を取らなければいけなかったのか。なぜ、終戦まで続いたのか。本当に「微笑みながら突入」したのか。分からないこと、知りたいことは山ほどありました。
特攻関係の本はとてもたくさん出版されています。僕と同じように「特攻とはなんだったのか?」ということを知りたい人が多いのだと思います。