『シネマ』で村治は2曲、自分の手でアレンジも行っている。「ムーン・リバー」と坂本龍一作曲の「ラストエンペラー」だ。
「『ムーン・リバー』はギターを弾き、音をつむいでいきました。『ラストエンペラー』は、坂本さんとチェリストのジャケス・モレレンバウムがヴァイオリニストと3人で演奏されたバージョンが好きで、それをベースにアレンジしています。作業は自宅近くのカフェ。五線紙と2ミリの太さのシャープペンシルをもってでかけ、お気に入りのカウンター席でアレンジをしました。4時間くらい、頭の中で音楽を鳴らしながらの作業ですが、静寂よりもざわめきがあったほうがはかどります。育った環境のせいかな。うちはにぎやかで、小学生のころは、弟が騒ぐ部屋でギターの練習も勉強もやっていました」
「ラストエンペラー」はカフェで、4時間で譜面を書き、ギター1本の演奏とは思えないほど完成度の高い立体的な演奏。オーケストラのようにすら感じられる。
村治佳織は秋からいくつかの演奏会に参加する。(神舘和典)