(c)ENBUゼミナール
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 たった2館で公開されていた低予算のインディーズ映画が話題を呼んでいる。上田慎一郎監督の『カメラを止めるな!』である。監督&俳優養成スクール「ENBUゼミナール」の「シネマプロジェクト」の第7弾として制作されたもので、予算は約300万円。俳優はオーディションで選ばれた無名の人ばかり。6月に東京の2館で公開が始まると、SNSなどで「面白い」という評判が広まり、じわじわと人気に火がついていった。著名な映画評論家やタレントなども軒並み大絶賛している。

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 ただ、内容に関してはその性質上「ネタバレ厳禁」のため、誰もが口をつぐんでいる。SNSなどで見られる個人の感想でも、具体的にどういう内容の映画なのかは明かされていない。そのことが余計に人々の興味をそそることになった。連日超満員で上映館の数も徐々に増えていき、7月31日時点で全国109館での上映が決定した。

 無名の監督と俳優による低予算映画がなぜこれほど話題になっているのか。その理由はもちろん、映画自体が面白かったからだ。だが、ただ面白いだけの映画ならほかにもある。この映画の面白さはどういうふうに特別なのか。映画を見た立場から、なるべくネタバレを避けつつ、言える範囲で思うところを以下に述べたい。

 ただ、この映画を存分に楽しみたいならば、事前に内容に関して一切の情報を入れない方がいいと思う。これから映画を見ようと思っている方は、以下の文章は読まない方がいい。

 映画の冒頭シーンは、ゾンビ映画の撮影現場である。髭面の男性監督がヒロイン役の女優の演技に不満を漏らし、ネチネチと説教をする。撮影現場のシーンから始まることと『カメラを止めるな!』という題名からも想像できるように、この映画は「映画を撮ること」自体を主要なモチーフとしている。

 この映画が公開されてすぐに、映画関係者や芸能関係者から絶賛されたのは、彼らが映画やテレビなどの物作りの現場にいて、その空気をよく分かっているからではないかと思う。私自身もテレビ制作会社で働いていた時期があるため、この映画で描かれている現場の雰囲気はとてもよく分かる。

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この映画の面白さの本質とは?