1位が名鉄本線(神宮前→金山、栄生→名鉄名古屋)と犬山線(下小田井→枇杷島分岐点)、瀬戸線(矢田→大曽根)の4区間が143%で並んだ。5位に名鉄常滑線(豊田本町→神宮前)の142%、6位に名鉄津島線(甚目寺→須ヶ口)と地下鉄東山線(名古屋→伏見)が同率140%となった。8位は近鉄名古屋線(米野→名古屋)の136%。9位は地下鉄名城・名港線(金山→東別院)の135%。そして10位にJR中央線(新守山→大曽根)の127%がようやく登場する。

 やはり、名古屋圏でもJRは“穴場”と言えそうだ。そして、1位から6位までズラリと「名鉄」の名前が独占しているあたり、実に名古屋らしいと言えよう。

 大阪圏の混雑率に関する状況はどうなっているのか。データを集計した、国交省都市鉄道政策課の担当はこう解説する。

「大阪圏では輸送人員の数が、1975年度の数字を100とすると2017年度は76で、大きく減少しているのが特徴です。ピーク時だった1985年度の107と比べると、乗客の数が約3割も減った計算になります。これに伴って混雑率も低下し、近年は横ばいが続いています」

 帝国データバンクの調査を紐解いても、大阪では1982年以降36年連続して企業本社の転出超過が続いているという。この10年では団塊世代の大量退職もあり、大阪で働く人の数そのものがすっかり減ってしまった。だがその一方で、都市の輸送インフラとしての鉄道は、依然高い水準で動き続けている。結果的に、大阪圏全体が通勤・通学の上で“穴場”となってきていると言えそうだ。

 では、名古屋圏はどうなのか。前出の国交省の担当はこう続ける。

「名古屋圏では輸送力が1975年度以降おおむね増え続けており、今年度過去最高になりました。要因は調査中ですが、運行本数や編成両数を増やしたことなどが考えられます。そして2017年度の混雑率を見ると、大阪圏の全体が125%に対し名古屋圏は131%と、実は名古屋圏のほうが高いのです。輸送力を増強し続けているにもかかわらずです」

 名古屋圏は、人口減社会を迎えた今もなお、首都圏と並んで人口増加の一途を辿っている。それに合わせて、鉄道輸送力の増強が続いている格好だ。名古屋が車社会だと思い込んでいる人からすると、このことは意外に映るかもしれない。混雑率のランキングを見ても、大阪圏は100%を下回った路線・区間が26にのぼるのに対し、名古屋圏は3。割合から考えてもはるかに少ない。

 都市として鉄道インフラが“成熟”しきったと言える大阪圏に対し、まだまだ鉄道輸送が発展途上とも言える名古屋圏……車社会のイメージからするとにわかには信じがたいことかもしれないが、鉄道混雑率を見るだけで、こんなことがわかってくる。(河嶌太郎)

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