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 歌謡コーラス・グループ『純烈』のメンバーとして活躍する友井雄亮は、2001年に放送された『仮面ライダーアギト』で、仮面ライダーギルス・葦原涼役を演じている。今だから話せる撮影秘話を「仮面ライダーフィギュアコレクション30」のインタビューで語ってくれた。

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 初めて「変身」したときの感動を、実は、あまりはっきり覚えていないと友井雄亮は言う。感動よりも恐怖が上回っていたからだ。

 原因は、カラスである。葦原涼はアギトやG3と比べてダークなイメージということで、映像効果を出すために撮影場所のトンネル内にはカラスが20羽ほど用意されていた。

 もちろん撮影用のカラスで、ワイヤーで繋がれているから危害を及ぼすはずはないのだが、一つ、問題があった。薄暗がりの中、両耳に輝くピアスの存在である。「キラキラ光るから、クワクワ鳴きながらつつきにくる。『まばたきするな!』『よけないで!』と怒られても無理ですよ! 怖すぎて、どう変身したか覚えてないんです」と苦笑する。

 涼を「不幸すぎる男」と分析している。「ゲストとのエピソードも多いのに、涼と出会った人は皆、裏切る、去る、絶命する、で。あげく、本人も一度命を落としていますしね。凄まじいまでの逆境を一人で乗り越える精神力はすごい」と見る。

 不幸な男だから、というわけでもないのだろうが過酷な撮影も多かった。海や池に落とされた回数は、枚挙に暇がない。2月の西湖(山梨県)に着衣のまま飛び込まされたときには、浅瀬の岩で顔面を強打し、ケガのまま撮影を続けた。「直後の場面では俺の顔、赤く腫れてるんですよ」と話す。

 スタジオでのアフレコも一筋縄ではいかなかった。「ライダーだから、トウッ、と言えると期待していたのに『涼はトウッ、なんて口にしない』と否定され、『もっと肉がえぐられるような声を出せ』と指示されました。毎回、絶叫するので、噴射式の喉治療薬を手放せませんでした」と語る。

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