■JS(女子小学生)、JY(女子幼稚園児)もオシャレに
別の小学生向けファッション誌『JSガール』(三栄書房)の長谷浩二編集長は、特にここ1、2年で小学生向けブランドが増え、中学生向けブランドとの境目が無くなってきていると指摘する。
「幼いころから、ほかの子と被りたくない、人とは違う服が着たいという意思を持った子が増えています。そのため小学生のうちから、量販店で扱われている比較的安価な中学生向けの服を着るようになり、小学生向けブランドがよりデザイン性の高い服を出すようになっています」
誌面にはJC(女子中学生)やJS(女子小学生)だけでなく、JY(女子幼稚園児)も登場。ただ、学校に着ていけるかというハードルは中学より小学校のほうが高く、きゃりーぱみゅぱみゅが流行らせた大きなリボンは、後ろの子が黒板を見えないという理由で禁止令が出た学校もあったという。
さらに、投入されるアイテムは大人の間で流行したものが少し遅れて小学生ブランドで流行るという現象が起きていて、「昨年流行した肩開きや透け素材が今年増えています。ドット柄はおそらく来年でしょう」と長谷編集長は予測する。
大人から小学生へと流行が広がるスパンは以前よりも短くなっていると前出の馬場編集長は指摘する。例えば、高級ブランド「セリーヌ」が火付け役となったクリアバッグ。インスタグラムでも話題になり、今年の春夏の流行アイテムだが、大人の雑誌で特集が組まれた数カ月後にはショッピングモールの子ども服コーナーに並ぶようになったという。
前出の白土教授は、小学生のオシャレが進む背景に少子化の影響があると分析する。
「ランドセル選びが『ラン活』と呼ばれて過熱しているほか、小学校の卒業式に袴を着る子が増えたり、公立小学校でアルマーニの標準服が導入されるなど、子ども向けの商品が高額化、ブランド化しています。それは少子化により子ども1人にかけられる金額が大きくなり、各メーカーがそれに見合ったサービスを競い合いっている結果といえるでしょう。さらに、いまは祖父母だけでなく独身や子どもを持たない叔父、叔母からの援助も期待できる。ただ、家庭の経済力が子どもの見た目に大きく影響を与えるようになると、学校ではいじめの温床になる可能性もある。親や教師など、大人がきちんとコントロールしていかなければいけないでしょう」
冒頭の母親は、こうもこぼした。
「娘と一緒に原宿に買い物に行ったとき、少し目を離しているすきに高校生の男の子にナンパされていることがありました。動画配信をやってみたときも、男性から『アイドルになってね』とか『もっと配信してほしい』というメッセージが増え、怖くて止めさせました。どこまで制限すべきなのか、判断がとてもむずかしい」
子どもの安全を守りながら、子どもの思いを尊重し、周囲の子にも悪影響が出ないラインはどこなのか。親たちの模索は続いている。(AERA dot.編集部・金城珠代)