同時期に活躍したドイツのヤスパースは二度の世界大戦を経て、1948年に「大学教育とは一般大衆から精神貴族(必ずしも世襲貴族や金持ちの出身を意味しない)を分けるために存在する」としている。

 今回の一連の騒動を見ていても、上に立つ者の規範の欠如はいかに巨大かつ盤石の基盤を持っているように見えても、組織全体を崩壊の危機に立たせることを痛感した。さらにヤスパースは『大学の理念』の中で「大学は、移ろいゆくことのない理念、国家を超越した、世界に広汎に通用する性格の理念に基づいて自ら固有の生命をもつ。なぜなら、大学は『学問』をするところだから」「学問は、欺瞞を暴くものである。学問は、無批判的な思惟と固定化を解消する」「したがって、市場原理的な大学改革をしてはならない」としている。

 何とか勤務先が立ち直ること、微力ながら筆者がその一翼を担えることを切に希望する次第である。

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