昭恵夫人の関与が明らかになったことで、難航していた交渉に変化が出た。同年6月2日、財務局が森友学園に売払いを前提とした貸付契約に協力することを伝える。これが、籠池氏の国有地売却交渉が最初に成功したときだった。
だが、今回公開された4000枚の文書には、他の面会時の記録が詳細に記されていたにもかかわらず、核心である14年4月28日の「安倍昭恵文書」は含まれていなかった。共産党の辰巳孝太郎参院議員は、ヒアリングの席で財務省の官僚たちを前にこう問い詰めた。
「4月28日が一番大きなターニングポイント。籠池氏が(財務局から)三行半を下されようとした時に、写真を持ち出して、要求を突きつけた。そして、財務局は本省と相談して協力することになった。なのに4月28日の交渉記録が抜けている。ありえない。なぜ、出てこないのか」
これに対し、財務省の富山一成理財局次長は「ここに今日出しているものがすべてです」と繰り返すしかなかった。
だが、「安倍昭恵文書」の存在を示す記述も残されている。財務省が23日に公表した「本省相談メモ」と題された28枚のメモには、14年5月8~23日までの記録をまとめた4つの文書が公開された。ところが、財務省によるメモの概要の説明には「H26.4.28~H26.5.23本省相談メモ、法律相談結果等参照」と書かれていたのだ(写真参照)。4月28日の文書は含まれていないのに、なぜ、概要の説明で「H26.4.28~」で書かれているのか。
国会に提出された文書からわざと「昭恵案件文書」を抜いたのかを野党議員から追及された富山理財局次長は、「なんでかはわかりません」と答えるしかなかった。
“消された”可能性の高い「昭恵案件文書」。財務省は、記録の有無について「文書の廃棄は、決裁文書の書き換えとあわせて行われたと考えられる」と説明し、すでに処分したことも示唆している。