「不器用なんですよ。勘がよくてパッとできるタイプじゃないので、積み重ねるしかないんです」

 趣味のギターやサーフィンも、最初は下手だったという。それでもあきらめずに続けたら、あるとき自然にコードが押さえられる瞬間、波の上でスッと立てる瞬間がきた。

「英語も同じです。続けると必ず『あ、オレ話せる! 聞き取れる!』っていう瞬間がくる。楽しくなるのはその先なので、そこまではがんばって続けること。そして続けられる環境をつくること。それが大事です」 

 次第に英語力が仕事にも生かされるようになった。前述の「kiss 英語」だけでなく、中国での映画撮影の場でも役立ったという。

「通訳がいなかったので、監督やスタッフとのやりとりは全部英語でした。現地での取材も基本的には英語。ぼくが英語を使えなければ、あの場に立つことはできなかったと思います。英語が話せるということは、役者として生きるうえでも世界を広げてくれています」

■人生最後の日なら自分は何をするのか 

 英語で好きな言葉はありますか?と聞くと、少し考えてこんな言葉を教えてくれた。

“If you live each day as if it was your last, someday you'll most certainly be right.”
(毎日を人生最後の日だと思って生きれば、いつか必ずその日は来るだろう)

「スティーブ・ジョブズのスピーチを読んで、出合った言葉です。こんなふうに生きられたらすてきだなぁと思いました」 

 もし明日人生が終わるとしたら、自分は何をするだろう。山下さんの心に浮かんだのは、海外にいる自分のイメージだった。

「いままで行ったことのない外国のビーチで、現地の人と英語で話している、そんな感じですね」 

 山下さんにとって、英語で人と話すことは、とても大事なことなのだろう。

「自分は何が好きで、何に幸せを感じるのか、何をすてきだと思い、何に価値を感じるのか、それをもう少し突き詰めたいんだと思います」 

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