メンタル不調に陥った若者へどう接すればいいのか(※写真はイメージ)
メンタル不調に陥った若者へどう接すればいいのか(※写真はイメージ)
この記事の写真をすべて見る
田中圭一さん著『うつヌケ』
田中圭一さん著『うつヌケ』

『うつヌケ』という、30万部超えを記録した漫画がある。著者は自身もうつを患っており、そのトンネルを抜け出した経験を持つ、漫画家の田中圭一氏だ。『うつヌケ』には田中さんと同様うつに苦しみ、自分なりの方法で“うつトンネル”を脱出した17人のケースが紹介されている。田中氏はどんな思いでこの本を著したのだろうか。また会社でのマネジメント経験もあり、現在は京都精華大学マンガ学部准教授として、多くの若者を指導する田中氏に、うつを始めとするメンタル不調に陥った若者へどう接すればいいのかを聞いた。

【写真】30万部超えを記録した漫画『うつヌケ』

 田中氏のうつ病発症は、まだ会社員だった2005年ごろのこと。転職先で任された、本当は自分に向いていない仕事で無理に頑張ってしまったことがきっかけだった。毎日続く原因不明のつらさ、絶え間なくつきまとう恐怖と不安、どんな曲や映画、美しい景色を見ても、何の感動も湧かない。そんな症状に長年苦しめられた。

 発症から10年近くたったある日、田中氏はたまたま立ち寄ったコンビニで、一冊の新書を手にした。

「ある精神科医自身がうつになり、自ら考えた方法で脱出した経緯が書かれていました」。そこに書かれていたうつの正体は、田中氏にとって説得力があるものだった。脱出法も田中氏に合っていたのか、実践してみると本当に気持ちが明るくなっていった。

「私はこの本に出会って、うつを抜け出すきっかけをもらった。漫画を描くという自分のスキルを生かして、次は自分がうつに苦しむ多くの人の、『偶然出会う一冊』を生み出す番だと考えました」

 こうして世に出された『うつヌケ』には、田中氏を含む17人のうつに陥った発端、その症状、トンネルを抜け出すきっかけが描かれているが、それぞれのストーリーには様々なバリエーションがある。例えば仕事との関係一つとっても、仕事を辞めて休んだことがよかった人もいれば、逆に仕事が支えになったという人もいる。

「自分が嫌い」になるからうつになる。だから「自分を否定するものから遠ざかり、肯定するものには近づくべきだ」という、うつの本質にまで話を掘り下げれば、仕事が自分を否定するものなのか、肯定するものなのかによって関わり方は変わってくるものだとわかる。だが表面的に見える対処法は、人によって180度違うことになる。「いろいろなバリエーションのあるうつヌケストーリーから、自分に近いものを見つけて、参考にしてほしいと思っています」と田中氏は話す。

次のページ