日本年金機構の本部ビル前に集まった報道陣 (c)朝日新聞社
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会見する日本年金機構の水島藤一郎理事長(右から2人目)(c)朝日新聞社
会見する日本年金機構の水島藤一郎理事長(右から2人目)(c)朝日新聞社

 年金情報の入力業務を委託された「SAY企画」が、中国の業者に事業を再委託して個人情報が渡っていたことが問題となっている。入力作業もずさんで、86万件のミスがあった。

【写真】日本年金機構の会見の様子

 そのなか、SAY企画でデータ入力の仕事をしていたAさん(40代・女性)が、その実態を証言した。Aさんは言う。

「他の官庁のデータ入力をやったことがありましたが、年金機構の仕事は数が膨大。受注が決まった時は、社長は『人が足りない。友達でパソコン入力ができる人を探してくれ』と、私も声をかけられました。時給は1100円ぐらいで、いろんなところで求人を出していました。それでも人が集まらない時に、年金機構のデータがドバっと来ました」

 データ入力の手法も、お粗末なものだった。

「スキャナーで紙を読み込ませて、データ化して入力していました。だけど、手書きの紙を読み込ませると、正しくデータ化されません。複雑な漢字や旧字体もあります。それを、実際の年金機構の書類を突き合わせないといけない。これがとても時間がかかるので、昨年の秋ごろ、急に『スキャナーはやめる』となった。年金機構との約束で、1つずつ入力する契約になっていたようです。だけど、1週間ほどして、またスキャナーに逆戻り。人がいなくて『納期に間に合わないから』と上司は説明していました」

 会社側の焦りはつのり、次第に「正確に入力すること」よりも「納期に間に合わせること」を優先するようになっていったという。

「スキャナーのミスをチェックすると、けっこう時間がかかるんです。すると、上司からは『1枚目だけチェックして。残りをやっている時間がない』となった。『もう適当にやってくれ』という感じです。手書きのものは『0』なのか『9』なのか数字が判然としないものが山のようにありました。いつしか、『まあ、0でいいか』みたいな感じでやってました。年金機構には、入力作業は800人程度でやると説明していたようですが、実際はその半分ぐらいしかいなかったと思います」

 データ入力のために使用されたパソコンも、性能が悪かったという。

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よくこんな会社が大事な仕事を受注できたな…