ポステコグルー監督が意識的に取り込んでいるのは、ポジショナルプレーを基盤とした適切なポジショニングと速く正確なパスの融合だ。日本の選手はパスを回そうとすると距離が近くなり、つなげばつなぐほど攻撃の幅が狭くなりがちだ。ポステコグルー監督は例えば、左でパスをつないだら、右サイドの選手がそこに関わろうとボールサイドに寄るのではなく、幅のあるポジションを維持して、インサイドに生じるスペースを共有させる。

 そして、重要なのはパスワークにおいて攻撃の幅を取りながら、縦に間延びさせないこと。中盤の選手がプレッシャーを避けるために後ろまで下がることは極力せず、DFラインもボールとMFの位置に合わせてコンパクトに上下動させる。そこにGKも関わることで、ラインを下げずにつないで崩していく基本スタイルが可能になった。GK飯倉大樹の走行距離が通常のGKの倍近い7キロにも達していることが話題になっているが、そうした関わり方を考えればロジカルな現象だ。

 こうしたスタイルでは攻撃面がフォーカスされやすいが、ポジショナルプレーとは本質的に攻守両面のバランスを前提とした理論であり、相手ディフェンスを崩すための攻撃が自分たちの守備バランスを崩す形にならない時ほど機能していると言える。全体の幅を維持するのも、攻撃時から縦にコンパクトなブロックをイメージするのも、攻撃から守備に切り替わった時に、そのまま守備の準備ができているのが理想だ。

 できるだけ組織としてリトリート(後退)せずボールにアプローチし、高い位置でボールを奪って攻撃に切り替えていく。その関連性から見れば、今季開幕時の横浜FMはまだまだ初歩的な段階かもしれないが、モンバエルツ前監督が植えつけた守備のベースがかなり生かされている。

 こうしたスタイルを押し進めるにあたり、ポステコグルー監督はフォーメーションを4-1-4-1に設計し、中盤を逆三角形の形にした。全体のパスワークが常にトライアングルとなる意図もあるが、マンチェスター・シティーのそれと同様に、中央とアウトサイドの間に生じるハーフスペースを効率よく使ってチャンスにつなげやすい。これに従い、両SBのポジションは基本的にサイドハーフよりインサイドになった。

 SBがインサイドにポジションを取るのは前方の選手たちと斜めの関係を作り、必要に応じてアンカーの両脇にあるスペースを彼らが有効活用して攻撃の起点とするためだ。こうしたポジショニングは“偽SB”とも呼ばれるが、それはSBがライン際でボールを縦に運ぶだけでなく、パスワークによる組み立てに主体的に関わることで、チーム全体を押し上げながら攻撃していくことを可能にするためだ。

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日本サッカーへの影響は絶大?