「JCOG0404」の結果は、非劣性を証明できなかったという点だけでなく、腹腔鏡手術の弱点を示唆している。結果をさらに詳しく解析したところ、腹腔鏡手術では5年生存率が悪い傾向の群があったのだ。具体的には、cT4、cN2という進行したステージ、直腸S状部という部位、肥満という条件だ。絹笠医師はこう話す。
「腹腔鏡手術には苦手な条件、弱点があるということです。また、開腹手術では病院ごとの差はなかったですが、腹腔鏡手術ではばらつきがありました。だから、誰がどんな症例に対してもおこなっていい手術ではないということが言えます」
技術力がある病院が参加しての試験ですら、病院間格差があったのだ。それ以外の病院であれば、もっと生存率にばらつきが出ることは容易に想像がつく。
現在のガイドラインでは、腹腔鏡手術は「術者の経験、技量を考慮して決定する」とある。
「問題なのは、自分の技術力を客観的に評価することが難しいこと。だから、『自分ならできるだろう』と技量に見合わない症例にも実施してしまう恐れがあります」(絹笠医師)
日本内視鏡外科学会は技術認定制度を設けているが、消化器・一般外科領域(大腸)の合格率は20~30%。合格していない外科医も腹腔鏡手術をおこなっているのが現状だ。
腹腔鏡手術には開腹手術より劣る条件があり、それをきちんと見極めて適応を決める必要がある。患者の状態やがんについての判断は外科医がするものだが、外科医の経験、技量については患者が慎重に選ばなければならないということになる。
「がんを治す」腹腔鏡手術を受けるには、患者自身の選択が鍵を握っていくことになるだろう。(文/杉村健)
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