ただ、お笑いコンテストの面白いところは、優勝者だけが注目されるわけではない、ということだ。最近ではむしろ「優勝者よりも2位が売れる」という説もある。南海キャンディーズ、オードリー、にゃんこスターなど、「2位」になったことをきっかけにスターダムを駆け上がっていった芸人は数多くいる。

 また、決勝で下位に沈んだり、低い評価を受けたりしても、それとは関係なく売れていくパターンもある。メイプル超合金やカミナリは『M-1グランプリ』の決勝で点数こそ伸びなかったものの、そのチャンスをものにして一気に仕事を増やしていった。

 逆に言うと、お笑いコンテストの世界では優勝したからといって安泰だというわけではない。優勝というのは、あくまでも「その種目(漫才やコント)でチャンピオンになった」という称号が与えられるだけだ。「テレビにたくさん出られるようになる」「冠番組を獲得する」といった次の目標を達成するための戦いはむしろそこから始まる。

 そもそも、スポーツ競技と違って、お笑いは点数がつけられないものだ。本来、不特定多数の人を笑わせるために行われることだから、「審査」に馴染まないところがある。点数による評価はお笑いの本質ではない。

 受け手としては、オリンピックもお笑いコンテストも一種のお祭りとして気軽に楽しむのがいちばんいい。勝敗を決めるというシステムは、あくまでもお祭りをより盛り上げるために導入されている仕組みの1つにすぎない。出場する側がメダルや優勝といった結果にこだわるのは当然だが、見る側はそこに縛られすぎず、競技そのものを素直に楽しめばいいのではないかと思う。(ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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