医師らが定期的に訪問し、病気とはいえない状態を含め、さまざまな不調を診てくれる在宅医療。どんなときに、在宅医療を受けるのがいいのでしょうか。好評発売中の週刊朝日ムック「さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん」では、全国在宅療養支援診療所連絡会会長の新田國夫医師に取材しました。意外と多くの患者・家族が、在宅医療の対象といえるようです。
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加齢などで体力が低下し、認知症などがあると、通院が難しくなります。こんなとき、「病院へ通えないなら、お医者さんのほうから来てもらおう」と在宅医療が選択肢に入ってきます。
現在はとくに病気はなく通院していない人でも、落ちた体力の回復をめざして在宅医療を利用することが可能です。これは高齢者に多いパターンであり、実際、在宅医療の約60%を85歳以上の高齢者が占めています。
若年層も含めて在宅医療が視野に入ってくるのは、がんや慢性病で入院して治療を受けていたものの、病院でしかできない治療が一段落し、あとは在宅でも可能、となった場合などです。
入院を経て在宅医療に移る場合に気をつけたいのは、決断のタイミングです。在宅医療は家族とともに生活するための医療であり、家族との時間を十分に確保できる時期からの開始が求められます。
一方、在宅医療は入院していた病院側の事情から始まる場合もあります。急性期病院では手術などが必要な患者が次々に入院してくるため、入院が一定期間を超えた場合、病院側の意向で退院することになるケースがあるのです。
■動かない、食べない、社会活動をしない
現在、在宅医療を受けている高齢者の多くに共通するのは「生活不活発」です。筋肉減少で足腰が弱り、腰や背中の骨がつぶれ(圧迫骨折)、さらには抑うつや認知症も……。これらが絡み合って日常生活が不活発になって、通院できなくなるほど全身が弱り、在宅医療に至っているのです。
こうした高齢者によくみられる生活習慣は「動かない」「よくかんで、おいしく食べることがない」、そして「社会活動をしない」とされています。動かないことや栄養不足から筋肉が衰え、社会との関わりの少なさは、外出で筋肉を使う機会や、人とのつながりによる精神面での健康回復の機会を減らすことになるのです。