東京を中心に首都圏には多くの医学部があるにもかかわらず、医師不足が続いている。そのような中、現役の医師であり、東京大学医科学研究所を経て医療ガバナンス研究所を主宰する上昌広氏は、著書『病院は東京から破綻する』で、医療におけるエビデンスについて解説する
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自分や家族に医療が必要になったとき、望ましい医療を受けるには、患者自身が賢くなるほかありません。
皆さんが、自分自身のことを知ってください。
感染症などの急性疾患では、誰もが治癒を目指します。感染症から回復すれば、後遺症もなく、元の生活に戻ることができるでしょう。
問題はがん、心筋梗塞、脳卒中、認知症などの慢性疾患です。多くの場合、治療をしても、元の状態に戻ることは期待できず、治療で何を優先するかは、患者の価値観によります。患者が自分で決めなければなりません。
患者のニーズは多様です。これに呼応し、医師も多様化しています。
その一人が『患者よ、がんと闘うな』で有名な近藤誠医師です。彼の著作を巡って議論が盛り上がり、「アンチ近藤本」が何冊も発表されています。私も知人から、「もう何を信じていいかわからない」と質問されることが増えました。こうした場合、「患者はそれぞれ違う。アンチ近藤の医師に診察を受けた方がいい患者さんもいれば、近藤医師の考えに助けられる患者さんもいる」と助言することにしています。