新人王に輝いた西武・源田 (c)朝日新聞社
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 2017年もさまざまな出来事があったプロ野球。華々しいニュースの陰でクスッと笑えるニュースもたくさんあった。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「あってはならないこと編」である。

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 ロッテの本拠地・ZOZOマリンは、言わずと知れた強風が名物。これまでにも打球が強風に押し戻されるなどして、数々の珍プレーを生みだしてきたが、4月16日の西武戦でも、思わず「まさか!」と目を疑うような“あってはならない”プレーが起きた。

 初回に2点を先制した西武は2回2死一塁、浅村栄斗がセンター上空に高々と打ち上げた。平凡な中飛で、スリーアウトチェンジと思われた。

 ところが、いったん定位置で捕球体勢に入ろうとしたセンター・伊志嶺翔大は、打球が強風にグングン押し戻されるのを見て、慌てて前進。だが、50メートル5秒7の俊足をもってしても、追いつけそうにない。そこで、ワンバウンドで押さえるべく、立ち止まろうとした次の瞬間、足を滑らせて、スッテン、コロリン!

 ボールは伊志嶺をあざ笑うかのように目の前にポトリ。そして、大きくバウンドすると、後方へと転がっていった。

 一方、投球と同時にスタートしていた一塁走者の源田壮亮も、打球の行方を見ながら走っていたため、足元への注意がお留守になり、二塁を回ったところで、これまたスッテン、コロリン!

 本来なら二塁止まりの大チョンボになるところだったが、起き上がって外野を見ると、なんと、伊志嶺まで転倒しているではないか。「しめた!」とばかりに50メートル5秒8の俊足を飛ばし、一気に本塁を陥れた(浅村の記録はタイムリー二塁打)。かくして、西武は貴重な3点目を加え、試合も10対2と大勝した。

 今にして思えば、37盗塁を記録し、2017年の新人王に輝いた源田の“快速伝説”は、この試合から始まったのかもしれない。

次のページ たったひとつのプレーが試合の流れを大きく変えてしまった