大リーグではスマホなどに対応した「AR(拡張現実)」系サービスも導入する見込み(写真:Getty images)
大リーグではスマホなどに対応した「AR(拡張現実)」系サービスも導入する見込み(写真:Getty images)
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 日本のプロ野球はこれまで、ビデオ判定やコリジョン(衝突)ルールなど、大リーグで導入された新たな仕組みやルールを数年遅れで取り入れてきた。来年からは、これまで審判の判断に実施が委ねられてきたビデオ判定を各チームが要求できる新ルール、「リクエスト(大リーグでの名称はチャレンジ)」を導入する。そうした新たな試みは、大リーグではシーズンオフのオーナー会議やウィンターミーティングで取り入れるかどうか決めるのが通例だ。

 今年は12月11日から14日にかけてフロリダで開催されたウィンターミーティングでは、特に大きな新ルール導入の話はなかった。これはミーティング前に今オフの大きな懸案だった日本プロ野球との新ポスティングシステムに関する話し合いが決着していたのも大きな理由だろう。そこで今回は、大リーグにはあるものの日本のプロ野球にはないシステムについて、その導入の可能性も含めて考えてみようと思う。

 まずひとつ目は「スタットキャスト(Statcast)」。2015年から大リーグで正式導入されたこのシステムはざっくり言えば、高性能なカメラやレーダーを使って選手やボールの動きを数値化、分析し、それを映像としてファンに提示するサービスだ。ホームランの飛距離や弾道はもちろん、投手が投げたボールの回転数、外野手がフライの落下点に入るまでの効率などがリアルタイムでファンに届けられる。こうしたデータが好きなファンにとってはたまらないサービスだ。これまでの野球観戦になかった楽しみ方を提供するというだけでも、大きな意義があると言っていいだろう。

 ふたつ目は「スタットキャスト」をさらに活用した「AR(拡張現実)」系のサービス。ARとは人気スマホアプリゲーム『ポケモンGO』のように、デジタル情報を現実世界に重ね合わせる技術のこと。大リーグではこの技術に着目し、球場で専用アプリを起動したスマホなどをグラウンドに向けることで選手データなどが視覚化されるというサービスを立ち上げた。すでにいくつかのスタジアムでテスト導入されており、2018年にMLB公式アプリに搭載される見込みだという。

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