香港のビル屋上に目を向けると、そこにはスラム街が……。直撃すると意外な事実が発覚 (撮影/丸山ゴンザレス)
香港のビル屋上に目を向けると、そこにはスラム街が……。直撃すると意外な事実が発覚 (撮影/丸山ゴンザレス)

 世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレス。取材やインタビューの基本は英語である。それもフィリピンで習得したアジアン・イングリッシュ。ブロークンであるがゆえに、恐ろしくも奇妙で日常生活ではまず使うこともないようなやりとりも生まれてしまう。そんな危険地帯で現地の人々と交わした“ありえない英会話”を紹介する本連載、今回のキーワードは、香港の屋上スラムを探索中に質問した「How much is the rent?(家賃はいくらですか?)」である。香港の闇の部分とされる屋上スラムとは、いったいどんなものなのか。

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 香港のスラム街といえば「九龍城砦」と呼ばれた違法建造を繰り返した巨大な“団地”が有名だ。だが、治安の悪化や老朽化といった多くの問題を抱え、香港の闇の象徴として扱われてしまったため、1994年頃に取り壊されている。

 では、現在はスラム街が無くなったのだろうか。疑問を抱いた私は取材に訪れた。

 まず、考えたのは、そもそも地価が高額な香港でスラム街という形が成立するのだろうかということ。中国本土から伸びた九龍半島と対岸の香港島という限られた範囲で人々は高層ビルを建築して土地を有効活用してきた。そこにスラム街など成立するのだろうか。

 一方で私には確信があった。都市にはスラムが付き物である。貧富の差が生まれた地域では、人々は経済的な理由でも治安の面でも居住エリアを明確に分けるようになる。つまり、どんな街にもスラムやそれと同じような貧民街というのは生まれるのである。特に経済的に発展を遂げている都市であれば、その傾向は顕著になる。ただし、スラムの形態は都市によって様々で、香港オリジナルの形を追い求めて、歩きまわってみたのだ。

 旺角(モンコック)など九龍半島の繁華街には、ビル以外の空きスペースが皆無である。もし建物がない場所があるとしたら、公園だったり、建設予定地でたまたま更地になっている所といった感じだ。

 いったいどこにスラムがあるのか。

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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