極め付きは2013年の東アジアカップで、最終日の日本戦で試合前に「歴史を忘れた民族に未来はない」という横断幕をバックスタンドのゴール裏付近に掲げる。さらにゴール裏では安重根(初代韓国統監の伊藤博文を暗殺)と、李舜臣(豊臣秀吉軍を撃退した朝鮮水軍の将軍)のふたりを描いた巨大な肖像画が韓国のゴール裏を覆い尽くした。

 奇誠庸が前述のパフォーマンスをした2011年のアジアカップ準決勝ではPK戦で韓国を破り、その後オーストラリアも撃破して日本が優勝した。同年8月も日本は札幌で韓国と対戦し、香川真司の2ゴールと本田圭佑の1ゴールで3-0と完勝した。3点差の勝利は1974年の第3回定期戦以来37年ぶりの快挙でもある。そして、この連勝により韓国は「上から目線」の余裕がなくなり、日本を「対等のライバル」と認めざるをえなくなったのではないだろうか。その悔しさの表れが「サッカー以外の行為=政治的なメッセージ」になったのだと推測している。

 こうして過去にはさまざまなドラマのあった日韓戦。16日の試合は国内組にとってロシア行きをかけたサバイバルの場でもあるが、勝敗だけでなく、意地と意地のぶつかり合う白熱した好ゲームを期待したい。(文・六川亨)