医療分野のテクノロジーの進歩は目覚ましく、疾患の早期発見・治療、リハビリに大きく貢献することが期待されています。好評発売中の週刊朝日ムック「脳卒中と心臓病のいい病院」では、脳卒中患者などのリハビリを支援するロボットを取材しました。
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近年、脳卒中の救命率は格段に向上しています。しかし、半身麻痺(まひ)などの後遺症に苦しむ患者は依然として多く、術後早期からリハビリに努めることがきわめて重要です。人工関節置換術などの外科手術を受けた患者についても、筋力やバランス感覚を回復するうえで術後早期からの歩行練習が欠かせません。
トヨタ自動車は、こうした患者のリハビリ支援を目的としたロボット「ウェルウォークWW-1000」(以下、ウェルウォーク)を開発。今秋から医療機関向けにレンタルを開始します。
同社は、1980年代に導入を開始した自動車生産用の産業ロボットの技術などを応用し、人の活動をサポートし、人と共生する「パートナーロボット」の開発を進めてきました。2007年に藤田保健衛生大学とウェルウォークの共同開発を開始。11年から医療機関での実証実験、14年から全国23の医療現場での臨床的研究を経て製品化されました。
「ウェルウォークの開発に際しては、『効果的なリハビリの支援方法とは何か』を念頭に置き、医療機器としての安全性の確保、医師・リハビリスタッフの方々の使いやすさと患者さんの負担の最小化、特にロボットであるからこそ誰にでも簡便に使えることを重視しました」(同社パートナーロボット部開発担当者)
ウェルウォークは、動く歩道のようなトレッドミルや歩行状態を確認するモニター、転倒防止のためのベルトなどからなるシステム本体、麻痺側の脚に装着するロボット脚で構成しています。
下肢に障害のない人の歩行は、(1)片方の脚を接地し、膝ひざを伸ばした状態をしっかり保持して体重を支えながら進行方向に重心を移動する「立脚」、(2)もう片方の脚の膝を曲げ伸ばし、進行方向に振り出す「遊脚」という二つの動作を無意識に繰り返すことによりおこなわれます。