この時に、今までの山のようなわだかまりを一旦、横において、
「そっか。それなら、どうやって一緒に生きていくか考えよう」
と、身をひるがえしてくれるパートナーは多くありません。離婚を受け入れた側は断腸の思いで、自分に離婚を納得させてしまったので、そんなに簡単に翻せないのです。
理屈も後押しをします。
「あなたが離婚したいと言い続けてきたことに、私が同意しただけなのに、何が反対なの?」と。
こうなってしまうと、なかなか当事者同士で話し合うのは難しくなってしまいます。
■言葉のインパクトに頼らない
「離婚」と言われたとき、頭の中で
この人は、「大好きな私と離婚したいまで思いつめるほど、何か辛いこと・嫌なことがあるんだ」と理解してみて下さい。そしたら、「何がそんなに嫌なのかな?」「何がこの人をそんなに追い詰めているんだろう?」っていうスタンスで話を聞いてください。
「離婚」と言いたくなったとき、
「別れたくなんかないのに、それでも離婚しかないんじゃないかと思ってしまうほど辛くなっているんだ。話を聞いて」
と忍耐強くアプローチしてください。
もし、すでに「離婚」と言ってしまったのなら、
「離婚と言ってしまったけど、本当は離婚したいわけじゃなくて、離婚したいと思ってしまうほど辛いって言いたかったんだ」
と勇気を持っていいましょう。小康状態になったときこそ言い時です。
言葉のインパクトに頼らないでください。それでは悲劇を引き起こしてしまいます。(文/西澤寿樹)
西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。医療関係者、法曹、企業経営者、アーティストなどのクライアントからの信任が厚い。慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職