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「この本は『不戦の書』である」
元政治家であり、現在はシンガポール・リークワンユー政治大学院で教鞭を執る田村耕太郎氏がそう表する自著『頭にきてもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)は、“アホ”と戦わないための本だ。
田村氏は「人生で最も貴重な資産は『時間』」だという。さらには、その貴重な資産をアホのために使うこと以上にもったいないことはこの世に存在しない。アホは上手にスルー。それなりに力があって利用価値のあるアホは、こちらがコントロールできる戦術でこちらの仲間に引き入れて活用すべきだと主張する。
こうした考えの背景には、老獪な政治家たちと戦ってきた田村氏の実体験があった。そこからわかったアホの共通点、そして「政治家になったことを心から後悔した日」すらあった苦い経験とは……。
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アホとはどんな人物だろうか? 一言で言えば、あなたがわざわざ戦ったり、悩んだりする価値のない人間である。そして不条理な人物である。あなたにとって一見、目障りで邪魔である。時として正当な理由もなくあなたの足を引っ張ってくる当たり屋でもある。あなたに体当たりして絡んで、自分の価値を上げようとする人物だ。
あなたにしつこくアタックしてくるアホの特徴は、まず暇であること。暇に加えて、これはあなたが知らねばならない大事な特徴だが、このアホはあなたに強い関心がある。しつこく嫌なことをやってきたり、言ってきたりする人は、実はあなたに興味があり、かまってほしかったりする。つまり、あなたに振り向いてほしいから理不尽なことを言ってくるのだ。
表向きは気付いてはいないかもしれないが、深層心理では多分あなたが好きだ。嫌いというケースもあるだろうが、深層心理では、好きも嫌いも、強い関心があるということで同じである。あなたがアホだと思うくらいだから、その人物の実力を認めていない。しかし、それなりにあなたの未来に影響力を持っている場合がある。だからあなたは気にしてしまう。
こうした人物には、もうすでにこちらから“嫌いオーラ”を送ってしまっている可能性が高い。向こうはあなたに関心があり、潜在意識では好きかもしれないのに、あなたが嫌いオーラを発していたら、向こうの愛は憎しみに変わる。そして、すでに決戦の火ぶたは切られてしまっている。