大宮赤十字病院では、心肺停止から急性心筋梗塞、脳卒中までの患者を引き受けていました。こうした患者は早期の対応が求められます。
たとえば、心筋梗塞の患者が来たら、すぐに検査や治療を指示し、同時に緊急カテーテル検査を行うか判断しなければなりません。判断に困るときは、先輩医師に電話して、指示を仰ぎました。心臓カテーテル検査を実施すると決めれば、他の先輩医師にも電話して、緊急来院をお願いしました。彼らが来てから検査に入ることもありました。
このような重症患者に対応している間は、別の患者を診ることは不可能です。脳卒中や心筋梗塞など、迅速な対応が必要な患者の場合は、救急隊から連絡を受けても、「申し訳ない」と思いながら、お断りしたことが何度もあります。
これが、当直医の立場から見た「救急患者のたらい回し」の実態なのです。
■「緊急受け入れ病院」制度の限界
埼玉県は、救急車の「たらい回し」を防止するため、14年4月には全ての救急車にタブレット端末を設置し、15年2月には「緊急受け入れ病院」を4ヵ所から12ヵ所に増やすことを決定しました。