大阪維新の会が国政に進出するにあたって目指すものをまとめた「維新八策」の最終版が出た。3月に「たたき台」が公表され、7月に「改訂版」が、そして今回「最終版」が発表されたわけだが、ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、この三つの版を読み比べると、維新の会の主張が急速に「変質」していることがわかると主張する。「たたき台」の内容を見てみよう。
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世の識者の声を総合すると、維新の会に対する最も一般的な批判は「大衆迎合」だろう。「3年前、民主党は甘い公約を並べて政権を取った。同じことを維新は行おうとしている」という批判は耳に入りやすい。ところが、3月に発表された「たたき台」を真剣に読むと、この政治集団が実はポピュリズムから最も遠いところに位置していたのが分かる。問題の年金についてはこうあった。
・現行の制度は一旦清算
・積立方式への移行
・資産のある人は、まずはその資産で老後の生活を賄ってもらう
民主党は前回の衆議院選挙に際して、「すべてのお年寄りに月7万円ずつ配ります」と約束した。維新八策「たたき台」は「すべてのお年寄りから年金を奪って、老後は自己責任で」と提案した。「できないことを言って世の中を動かす」のがポピュリズムの定義なら、維新も新手のポピュリズムと言えないこともない。だが、「甘言を弄してウケを狙う」という意味では、もともとの維新八策にはポピュリズムのかけらもなかった。そこにあったのは、維新の会の主要メンバーである橋下徹、松井一郎、浅田均3氏の良く言えば純粋な、悪く言えば子供じみた理想を文字に起こしたものだったのだ。
※週刊朝日 2012年9月21日号