ブラジル戦のキーマンとして期待される久保裕也(中央)(写真・Getty images)
ブラジル戦のキーマンとして期待される久保裕也(中央)(写真・Getty images)

 世界最強国のひとつとされるブラジルとの試合は、守備面にフォーカスされる部分が大きい。当然、前線の選手にも守備のタスクは求められるが、それは最低限の責務だ。真価を示すのはやはり攻撃面、とりわけゴールに直結する仕事となる。

 ブラジルは豪快な攻撃陣がスポットを浴びやすいが、南米の大陸選手権であるコパ・アメリカの後にチッチ監督が就任してからは南米予選で12試合3失点、親善試合を合わせても15試合で4失点と無類の堅守を誇る。

 日本対ブラジルの成績を見ると、直近3試合の対戦で計11失点しているのが目立つが、1ゴールも奪えていないという事実もある。しかも、チッチ監督が就任してからのブラジルは、ハリルホジッチ監督が「はじめてブラジルがブロックで守備をするのを目にした」と称賛するほど組織的なディフェンスを特徴としている。

 親善試合とはいえ、そうした相手から得点を奪うことができれば、チームとしての自信につながるだけでなく、得点者は国際的にも大きな注目を集めるだろう。

 その候補者のひとりとして期待できるのが久保裕也(ヘント/ベルギー)だ。最終予選のアウェーUAE戦でチームを勝利に導く1得点1アシストを挙げると、ホームのタイ戦でも香川真司(ドルトムント/ドイツ)の先制ゴールと岡崎慎司(レスター/イングランド)の追加点をアシストし、さらにチームの3点目を自らの右足で叩き込んだ。

 昨年暮れにA代表デビューした久保は瞬く間に重鎮の本田圭佑(パチューカ/メキシコ)からスタメンを奪うほどの存在に台頭したが、その後はなかなか得点を奪うことはできなかった。今季に入ってベルギーリーグでもしばらくゴールから遠ざかっていたが、9月17日の第7節で初得点を記録すると、そこから短期間でさらに3得点を積み上げた。

「現在もめちゃくちゃフィットしているわけじゃないですけど、シーズン始まりに比べては良くなっている感じはある」

 久保は右ウイングが主戦場の日本代表と違い、ヘントでは4-2-3-1のトップ下を担うが、攻撃の司令塔というよりは仕掛けのアクセントになることと、機を見てゴールに向かうシャドーストライカーの役割がメインとなっている。組織的な戦い方が生命線となるブラジル戦に向けても「個人として何ができるかは試したいですし、チャレンジする場だと思います」と語る。

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