そこで、萩本は一計を案じて、進行役として女性アシスタントを起用することにした。台本通りの進行はそちらに任せて、自分はアドリブで番組を盛り上げることに専念することにしたのだ。すると、その自由なスタイルが評判となり、萩本のもとには次々と司会の仕事が舞い込んできた。現在でも、芸人がメイン司会を務め、進行役のアナウンサーが脇を固めるという番組は多い。

 そもそも、司会者は1つの番組に1人しか必要ない、というのがそれまでの常識だった。それぞれ役割分担した司会者を2人配置するというのは、テレビの歴史を変える革新的なことだったのだ。

 萩本は、人前に出る職業ではない一般の人々、いわゆる「素人」の扱いに定評があった。萩本は街角に出向き、集まってきた一般人に不意にマイクを向けたりした。そこで突拍子もない言葉が出てくるのを楽しんでいたのだ。プロの作家が知恵を絞って書き上げたギャグよりも、素人がなにげなく発した一言が大きな笑いを生むことがある。萩本はそんな素人の特性を熟知していた。

 また、萩本は共演するタレントを選ぶ際にも独自の基準を持っていた。素人と同じように、自然な反応ができるような人材も積極的に起用した。いわゆる「天然キャラ」と呼ばれるような人を番組に引っ張り出して、話を振り、ツッコミをいれることでその個性を引き出していった。そもそも、とぼけたキャラクターのことを「天然」という言葉で呼び始めたのも萩本だと言われている。

 萩本は、他人の才能を発掘する達人でもある。『全日本仮装大賞』で共に司会を務めている香取慎吾も、萩本に見いだされた人物の1人だ。1994年に始まった『よ! 大将みっけ』という番組で、萩本は香取と初めて共演して、その才能に惚れ込んだ。そして、番組の打ち上げではスタッフの前で「この番組は終わってしまうけど、すごい宝物を見つけた。慎吾は見栄晴を超えました」と語ったという。

 10月18日放送の『おじゃMAP!!』では萩本がゲストとして登場して、自宅兼仕事場に香取と山崎弘也を招き入れた。そして、『全日本仮装大賞』の司会に香取が途中から加わった経緯について語っていた。

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