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人工知能(AI)の普及で大動乱の時代を迎えつつある今、生き残っていくためには「理系脳」を持つ必要があると、成毛眞は著書『理系脳で考える』で明かしている。文系でも、技術が苦手な人でも、「理系脳」になるために知っておきたい技術進化の流れとは。
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Mr. Watson, Come here. I want to see you!
アレクサンダー・グラハム・ベルが自ら開発した、電話なる機械で隣室にいた助手にこう呼びかけたのは1876年3月10日のこととされている。日本で言えば明治9年、廃刀令が出された頃のことだ。それからしばらくの間、電話はケーブルに繋がっているのが当たり前だった。その電話が、日本で肩にかけて持ち運べるようになったのは1985年。今も人気のスーパーマリオブラザーズの初代作が発売された年だ。オジサンたちが自慢げにその名もショルダーフォンを肩からかけて銀座のクラブで自慢していたのもこの頃だ。電話がケーブルから自由になるまでに、ざっと110年かかったことになる。
それから約40年がたった2007年にiPhoneが発売され、スマホの普及が始まった。2017年になり、先日発表されたiPhone Xはその最新版だが、この11年間で電話は見た目以上に中身が変わり、そして、広く普及した。スマホはこれまでに15億台も売れている。
なぜこれだけ売れたかというと、精度が上がった一方で安くなったからだ。
たとえばiPhoneには、6軸のジャイロセンサーが積まれている。ジャイロセンサーとは、コマの原理を利用して傾きを測定するもので、これが1976年に運用開始された戦闘機・F-15に搭載されたときには、ひとつで100キロほどあった。ジャンボジェットに積まれたときのお値段は15億円くらいと言われている。重さ的にも価格的にも、個人が買える金額ではない。しかし2017年の今、秋葉原のパーツショップで6軸のセンサーを買おうと思ったら、ペットボトル飲料より安く手に入るはずだ。