東海・東南海・南海地震が連動する「南海トラフ巨大地震」で、国の有識者会議は最悪32万人が死亡すると想定した。しかし、死者が100万人を超すとの見方をする専門家もいる。いずれにせよ、これほどの規模の災害から生き延びる術はあるのだろうか。

 今回の被害想定で、最も死者数が多かった静岡県には、地震の発生からわずか2分後に1メートル、4分後には5メートルの津波が襲来する。伊豆半島南部に位置する下田市では最大33メートルにもなり、御前崎市にある中部電力浜岡原発も、建設中の防波壁を超えて浸水する可能性がある。

 独立行政法人建築研究所の都司嘉宣(つじよしのぶ)・特別客員研究員はこう話す。

「この津波の規模は、今回想定されたような1千年に一度の超巨大地震が起きた場合に発生すると考えられるものです。今後、南海トラフで地震が発生したとしても、これより小さな津波になる可能性のほうが90%とはるかに高く、これほどの規模になる確率は10%です。このことを頭に置いて、あきらめないで逃げることが重要なのです」

 遠くへ逃げるのが難しい沿岸部にいる場合、避難の原則は津波避難ビルに逃げることだ。

「想定される津波が9メートルであれば、2割増しの11メートル程度の高さが目安です。歩いていける範囲に避難場所が整備されていない場合は、少しでも高いところ、少しでも内陸に避難してください。津波は微妙な地形の違いで到達が早まるので、河川の近くは通らず、できるだけ海抜の高いルートを選んで、一刻も早く逃げることが肝心です」(都司さん)

※週刊朝日 2012年9月14日号