さて安倍総理は、演説で何を語ったのか。あるいは語らなかったのか。約17分に及ぶ演説の構成は、大まかには次のような構成になっていた。
(1)候補者への支援の要請(5分)、(2)北朝鮮問題(5分)、(3)観光や農政を中心とした経済関係(1分)、(4)少子高齢化対策(2分)、(5)他党批判も含めた候補者への支援の要請(2分)、(6)雇用を中心とした自公政権の実績(2分)である。
候補者への支援の要請以外で、圧倒的に多くの時間を費やしたのは、北朝鮮問題だった。総理自身が「国難突破解散」と命名しているだけあって、今回の総選挙は「いかに日本を守り抜くのか」が問われているという認識を示していた。
総理は北朝鮮との「話し合いのための話し合い」には意味がないとして「圧力」という言葉を強調した。また世界各国の首脳たちは、総理に対して「日本の立場はよく理解したよ、協力しよう。みんなこう言ってくれた。」と述べていた。しかし世界的な動向を見てみると、ほとんどの国が圧力よりも対話を重視している。トランプ大統領が強硬的な発言を繰り返しているアメリカですら、対話の糸口を模索している。総理の認識は、明確にズレていると言わざるを得ない。
さらに安倍総理は、「民主主義の原点である選挙が、北朝鮮の脅かしによって左右されていいはずがない」と熱弁し、これには聴衆からも歓声と拍手が起こっていた。しかしはっきり言って、これについては意味がわからない。疑惑を国会で追及されたくないという総理の思惑によって、解散・総選挙が行われることのほうが、余程あってはならない事態だと思う。
次に総理が何を語らなかったのかについて見ていこう。はじめに述べたように、私が演説会に足を運んだのは、総理自身が森友・加計学園疑惑について「国民の皆様に対しご説明しながら選挙を行う」と明言していたからだった。しかし疑惑について総理の口から語られることはなかった。「説明しながら選挙を行う」という発言は、その場しのぎでしかなかったようだ。
また総理の悲願である、「憲法改正」についても全く言及がなかった。