JR東日本は205系が導入されてからKCIに社員を派遣、技術支援している。鈴木さんはこう話す。
「以前は使っていない車両から必要な部品を調達して、徐々にスクラップ状態になり廃車になってしまう車両が多かったんです」
関係者も「日本は部品が壊れる前に検査し、必要な場合修繕したり、交換する。インドネシアは部品が壊れるまで使う。意識のズレがあった」と話す。
鈴木さんらが毎日の検査や1カ月ごとの定期検査を体系化。「予備の部品を日本から調達するなどしてできるだけ長く安全に運行できるよう車両整備を続けている」という。
「東南アジアを走るニッポンの廃車両」(エイ出版)の著者、斎藤幹雄さん(47)は海外を走る日本の中古車両を追っている。斎藤さんによると、海外に搬出されている中古車両(貸車を除く)はインドネシアのほかにミャンマーやタイ、フィリピン、マレーシア、アルゼンチンにある。
車両数順ではインドネシアが圧倒的に多く、海外を走る全体の半分がインドネシア・ジャカルタの街を駆けている。斎藤さんはこういう。
「日本から部品扱いで搬出されたり、現地担当者の解釈の違いはありますが、6カ国の合計で車両は約2000両弱あります。インドネシアに限ればここ4~5年ほどで最も車両が増え、500両以上搬出されました」
元千代田線の車両がジャカルタに到着した9月19日、KCI社(インドネシア通勤鉄道会社)は、社名をジャカルタ首都圏通勤鉄道会社から変更したと発表した。旧名称に入っていた「ジャカルタ首都圏」を削除し、代わりに「インドネシア」を社名に加えた。
名称変更について、同社広報は「首都圏以外にも通勤電車の需要が高まってきた。他の主要都市でも通勤電車を導入していきたい」と強調する。
まずは日系企業の工場が集積する西ジャワ州ブカシ県チカラン地域まで広げる。インドネシアの鉄道関係者と直接やり取りしている斎藤さんはこう続ける。
「(インドネシアの)鉄道関係者は今後も日本の中古車両を求めている。日本の中古車両がさらに増えていくことは間違いない」
今後、ジャカルタ以外の主要都市でも日本の中古車両を見られる日が来るかもしれない。(佐藤拓也)