あまり知られていないが、インドネシアの首都、ジャカルタの首都圏を走る電車の車両は、9割以上が日本の山手線や埼京線などで使われたJR東日本の205系、千代田線の東京メトロ6000系などの中古車両だ。
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ジャカルタ北部にある同国最大の港、タンジュンプリオク港に9月19日、元千代田線の東京メトロ6000系20両が到着した。
ジャカルタ首都圏の電車を運営するインドネシア通勤鉄道会社(KCI)によると、年末までにジャカルタ首都圏で走る車両は900両に達するが、うち国産車両は一部のみ。
車両の9割以上が日本で引退した中古車両だ。内訳をみると、山手線や埼京線などで使われてきたJR東日本の205系電車の車両が約5割も占める。
郊外からジャカルタに通う現地新聞社の記者、アリョさん(28)は電車で通勤する。
「通勤時間の午前6時ごろは満員電車。日本の満員電車の映像を見たことがあるけど、それと同じくらい大変だと思う」
アリョさんは電車を利用する理由について、「ジャカルタは渋滞がひどく、タクシーやバスを使っていては時間通りに到着できないことが多く、電車のほうが速い」と話す。
約5年前の2012年当時、首都圏を走る電車の1日の乗車数は約36万人だった。当時を知る関係者は「車両の中に人が入りきらず、車両の上にも人が乗っていた」と語る。その後当局は13年に車両上に乗車することを禁止、車両を増加させて対応してきた。その結果今年6月、乗車数は約3倍に増え、100万人を達成した。
この需要を支えているのが、前述した日本の中古車両だ。急激な乗車数の増加に対しては、増結で対応している。これまで8両や10両編成で運用されていたが、12両編成の車両を増やしている。一般的に通勤電車の中では長いほうだ。
「現在、車両の外観はインドネシア向けにアレンジされています。しかし実際に乗ってみると車内には日本の面影が残っていて、懐かしさを感じます」と話すのは、JR東日本からKCI社に出向している鈴木史比古さん(45)だ。