友人とケンカした! 上司に叱られた! 恋人にフラれた!
そんなとき、“感情”さえなければ、もう少しラクに生きられるのに。そんなふうに考えたことはないだろうか。人間関係の悩みは、感情があるからこそ苦しくなる。
「対人トラブルに悩んでいるなら、現実的に解決を図るより、感情への対処が重要です。自分の中で感情がケアできれば、苦しさはぐっと減らせます」と話すのは、元自衛隊のメンタル教官で、『人間関係の疲れをとる技術』(朝日新書)の著者である下園壮太さん。
“自分の感情のケアをする”とは具体的にどういうことか。下園さんに教えてもらった。
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■すべての感情は、私たちを守るために存在する
そもそも、なぜ感情があると思いますか? それは、人類が生き延びるために必要な機能だったからです。
原始時代、「恐怖」を感じることで猛獣などの危険から逃げることができ、「不安」があることで猛獣や他の部族(人間)からの襲撃に備えることができ、家族が襲われそうになったら、「怒り」で我をも忘れて猛獣などの敵に立ち向かうことができました。つまり、一見ネガティブな感情でも、あなたを守るために発動しているのです。
現代の日本では、猛獣や、水・食料、病気やケガといった原始人の生存を脅かしていた要素はぐっと減りました。ただ、その中で「人間関係」についての恐れだけは変わらずに残っているため(現代、人間に一番、危害を加える可能性があるのは人間)、相対的に「人間関係」についての感情が発動することが多くなっています。
そして、いったん発動した感情は、あくまでも原始時代の「命がけモード」であなたを守ろうとします。感情が過剰に発動することで、私たちは苦しくなってしまうのです。
■感情には3段階がある
「感情」の強さには3段階があります。
(1)「危機対処」段階(3倍反応モード)
(2)「警戒」段階(2倍反応モード)
(3)「予防」段階(通常反応モード)
仕事のやり方をめぐって、同僚とケンカしたとしましょう。
口論で熱くなっている時が(1)「危機対処」段階(3倍反応モード)。相手のひとことに、通常の3倍で反応してしまいます。一日経って、ある程度気持ちがおさまったときが(2)「警戒」段階(2倍反応モード)。でも、まだ警戒心は解けません。しばらく何も起こらず、危機が過ぎ去ったと感じる過程で警戒レベルが少しずつ下がり、最後は(3)「予防」段階(通常反応モード)へ。このような3段階を経て、感情は収まっていきます。