怒り心頭の佐藤優氏(撮影/写真部・馬場岳人)
怒り心頭の佐藤優氏(撮影/写真部・馬場岳人)
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 あまりに唐突な、臨時国会の冒頭解散、総選挙への流れ。安倍首相が明らかにした“奇襲攻撃”に怒りを通り越し、「大義なき解散」にあきれかえる声が上がっている。

北朝鮮情勢が緊迫化するなかで、政治空白を招く解散には明確な大義がいる。/疑惑隠しや党利党略を優先するようなら、解散権の乱用というほかない」(朝日新聞社説9月18日付)

「与党にとっての損得だけで宝刀を振り回されては、有権者も鼻白むに違いない」(日経新聞社説9月19日付)

 安倍首相が解散を決断したのはいいが、10月10日公示、22日投開票という超短期決戦に、自民党が急ごしらえの“政策”をまとめるのに四苦八苦している様子がうかがえる。テレビ、新聞各社が報じている安倍自民党の公約案の中味は次のようなものだ。

(1)2019年秋の消費税率引き上げは予定通り行うがその使い道を大きく変え、増税分の大半を大学などの高等教育を含めた教育無償化に充てる。

(2)高齢者中心の社会保障を低所得者・若年者に向ける「全世代型社会保障」の実現をめざす――。

 こうした政策自体は決して悪いものではない。子育て支援が成長政策に寄与することを統計データで示すアイデアが若手研究者から出される動きもあり、方向性としては歓迎できるものと言えよう。

 しかし、問題なのは、これらがいずれも前原誠司・民進党代表がかねてから訴えていた政策に、酷似していることだ。事実、永田町界隈からは「争点つぶしを狙ったのでは」との声も聞こえてくる。

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