前原氏といえば、満を持しての党代表復帰早々、週刊誌報道で痛すぎるダメージを受けたが、もともと外交・安保をはじめとする政策通。昨秋には、前原氏のブレーンである井手英策・慶應義塾大学教授、そして作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏との共著『分断社会ニッポン』(朝日新書)でみずからが目指す政策とビジョンを明確に示している。

 今回、安倍首相が掲げる「人づくり革命」の理念も財源案もすべてこの本に基本となる考え方が書かれているのだ。共著者の一人、佐藤優氏はこう語る。

「何年もかけて構想し、学者の知見やデータをまじえて練り上げた政策を、総理大臣がいとも簡単にパクるというのは前代未聞。なりふり構わないのは政治家の常だが、総理がここまで恥も外聞もなく他人の政策を平然と“密輸入”したとしたら、早晩、国民にそっぽを向かれるだろう」(佐藤氏)

 自民党内からも「無理やりの解散」「森友、加計で追及されるのが嫌だったんだろう」との声も漏れ聞こえる。首相肝入りだったはずの「働き方改革」は実現に向かうどころか立ち往生し、たった一回開かれただけの「人生100年時代構想会議」の名前がむなしく響く。

 自民党自身が考えた、まともな政策論で戦ってほしいものだ。