東京・国立劇場で日舞松本流の公演に出演中の8月27日、歌舞伎界のプリンス・市川染五郎(39)が舞台のセリから3メートル下の奈落(舞台床下)に転落した。その日は、父・松本幸四郎(70)の古希の記念公演で、長女の初舞台でもあった。

 事故直後、染五郎は頭部や、鼻、口からも出血。「血の海。覚悟を決めました」と後に幸四郎は語っている。心配された容体は「右側頭部と右半身の打撲」と「右手骨折」で、最悪の事態はまぬがれたようだ。

 その衝撃的瞬間をカメラにおさめていたのがフジテレビだけだったという。

 28日の朝の情報番組「とくダネ!」では、冒頭から30分近くかけて事故を特集。客席にいた芸能リポーターの解説に、転落直前の映像や、「緞帳(どんちょう=舞台と客席を仕切る幕)!」「ダメです」と緊迫したスタッフの声、ざわめく観客の様子を何度も流した。

 翌29、30日も続報。実際にセリを使い状況を再現し、舞台の模型や奈落の高さを表すセットまで用意する熱の入りよう。さすがに、やりすぎ感が……。

「スクープ映像にしては初日の視聴率は芳しくなかった。だから翌日からもっと力んだんでしょうね。たとえ不幸な事故でも視聴率につなげるのは大事な姿勢ですから」(テレビ局関係者)

 芸能リポーターの石川敏男氏はこう話す。「事故は、踊りで気合が入り過ぎちゃったのでしょうが、9月の公演も『降板』でなく『休演』としているし、復帰までそう長くかからないと思いますよ」。

※週刊朝日 2012年9月14日号